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解    説

■判  決: 京都地裁平成11年9月13日判決

●商  品: 株価指数オプション(日経225)
●業  者: 東京三菱パーソナル証券(旧菱光証券)
●違法要素: 適合性原則違反
●認容金額: 343万7595円
●過失相殺: 7割
●掲 載 誌: セレクト14・379頁
●審級関係: 控訴審・大阪高裁12/8/29判決で維持

   【一審総論準備書面  控訴審準備書面@AB 】 

 本判決は、まだ数少ないオプションに関する判決として重要であるのみならず、その当否は別として、適合性原則と説明義務の関係につき理解能力の有無をメルクマールにこれらの適用場面を峻別したものとして注目に値する判決である。
 原告は高齢の主婦であったが、判決は、ハイリスク・ハイリターンの投資信託にも大金を投じていたこと、担当社員に2週間に一度保有商品の値段表を持参させていたことなどから高い投資意欲と積極性を持つ投資家であると認定した。また、判決は、オプションの基本的仕組みや危険性につき口頭説明がなされており、解説書等も3冊交付されていたと認定した。
 次に、判決は、オプション取引は、投資判断の困難性、満期日の存在、ハイリスク性などから、長い投資経験と深い知識を有する者でない限り、多くの個人投資家には適合せず、適合性を認め得るのは、顧客がハイリスクを承知で積極的に希望する場合を除き、資金力と長い投資経験があり、オプション取引の深い知識と理解を有し、他の取引ではできない投資戦略をとる場合に限られるとした上、本件では理解の有無が問題になるとした。他方、説明義務については、説明すべき事項を述べるだけでは足らず、義務が履行されたと言えるには顧客を理解させることが必要であるとし、顧客が理解できていなければ、説明方法が稚拙であったか顧客に理解能力がなかったかのいずれかであって、後者であれば、そのような顧客はそもそもオプション取引に適合せず、当該投資勧誘は適合性原則違反となるとした(判決は、個人投資家へのオプションの勧誘には、その投資家が仕組みや危険性について理解する能力があることが絶対の必要条件であるとしている)。
 そして判決は、取引内容をその手法を含めて子細に分析した上で、原告はオプションの仕組みや危険性についての説明をほとんど理解していなかった、一応の説明があったことからして、原告は理解能力を有しておらず、担当社員もこのことを知っていたか知り得たと判示し、適合性原則違反を認めた。
 但し、原告にも、一応の説明を受けて少なくともリスクの大きい取引とは分かったはずであるのに、担当社員に従ってさえいれば儲けさせてくれるはずであるとの安易な姿勢があったとされ、7割の過失相殺が行われた。勧誘すること自体が違法であったにもかかわらず、顧客が正しい理解を得られないままこれに応じたことが証券会社側以上に大きな責任を負担すべき落ち度とされ、かような高率の過失相殺が行われた点には、多大の疑問が残る。