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解    説

■判  決: 大阪高裁平成16年11月5日判決

●商  品: 株式(信用取引)
●業  者: 光証券
●違法要素: 過当取引
●認容金額: 1432万1665円
●過失相殺: 8割
●掲 載 誌: セレクト25・300頁
●審級関係: 神戸地裁平成16年4月16日判決の控訴審


 事案は、昭和45年頃から取引を行い、信用取引で損失を出したこともあった投資家(公務員)が、平成11年12月から同12年12月にかけて行われた信用取引等につき、過当取引等を理由に損害賠償請求を行ったもので、一審でも過当取引が肯定されていた(過失相殺7割)。
 本判決は、凄まじく頻繁な取引内容を分析的に示し、本件取引をするようになってから担当社員の営業成績が急速に上昇していることも指摘して、投資家の取引経験等からして完全な一任取引とまでは言い難いが実質的には一任取引に近い状況にあったと認定し、このことは違法判断の一要素となるとした。その上で、61.15という売買回転率から、投資家の取引経験等を考えても、「的確な投資判断を可能ならしめる限界を超えたもの」と判示し、手数料率の高さ(約40%)も指摘して、過当性を認め、口座支配性、悪意(過当性と口座支配性から故意ないし悪意が強く推測されると判示されている)も肯定して、過当取引の違法性を認めた。なお、本判決は、これも過当取引を肯定した大阪高裁平成16年10月15日判決と同じ合議部(但し陪席裁判官1名が異なる)の判決であり、過当取引の違法性の根拠や3要件の一般論についての判示内容は、ほぼ上記判決と同内容となっている。
 但し、損害論については、上記10月15日判決と同様、損害は手数料に限定して認めるのが相当であるとしながら、本件においては、担当社員の行為が社会的相当性を大きく逸脱し、取引全体が著しく不誠実であることを理由に、取引の実損全体が損害となるとされている(他方では、かように取引全体の損失を損害と認めたこと自体が、8割という大幅な過失相殺を行う理由の1つとされている)。
 10月15日判決と同様、過当取引の違法性に関する判示内容は有意義であるが、損害論や過失相殺については多大の疑問を残す判決である。