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解    説

■判  決: 神戸地裁平成16年4月16日判決

●商  品: 株式(信用取引)
●業  者: 光証券
●違法要素: 過当取引
●認容金額: 2143万2498円
●過失相殺: 7割
●掲 載 誌: セレクト24・35頁
●審級関係: 大阪高裁平成16年11月5日判決で維持(但し過失相殺8割)

 事案は、昭和45年頃から被告証券会社と取引を行い、信用取引で損失を出したこともあった原告(公務員)が、平成11年12月から同12年12月にかけて行われた信用取引等につき、過当取引等を理由に損害賠償請求を行ったものであった。
 判決は、まず、平成11年12月以前の取引回数(3年間で15回)に比べて、同月以降は約8カ月で113回(同日の同一銘柄の取引を1としても76回)となり、それまでは現物取引中心であったものが信用取引のみに急に変化していること、投資傾向も以前は重工業や電機など値の変動が少ない株式中心であったのが、同月以後はソフトバンクなどの値動きの激しい株式取引が増加していること、同月以降は担当者の営業成績の出来高シェアが大幅に増加していたこと、公務員である原告が、上司の咎めも受けることなく電話連絡で頻繁な取引を行えたとは考えがたいこと、などから、本件取引は一任取引であったと推認するのが相当であるとした。
 続いて判決は、違法な過当取引か否かは3つの要件を総合的に考慮して判断すべきであるとした上で、@前記の取引回数や、本件の売買回転率61.15が「一般的に過当性判断の基準数値とされている売買回転率6」を遙かに上回る結果となっていること、手数料率(総手数料÷平均投資額)も約40%となっていたことから、取引の過当性の要件を認め、A上記の一任取引の事実から、口座支配性の要件を認め、B一任取引の事実や担当者のシェアが急に増加した事実から、担当者は原告の利益を無視して自分の業績を上げることを意図していたことが推認されるとして、悪意性の要件を認めた。そして判決は、原告が長年の投資経験を持っており、信用取引の経験もあること等を考慮しても、本件取引は違法な過当取引にあたるとした。
 なお、損害に関しては、原告が現引きした銘柄についても、現引きは信用取引による買付をした結果であるから、信用取引による損害に含まれるとされ、原告が保有し続けていた銘柄については、口頭弁論終結時の時価が損害算定の基準となるとされた。また、信用取引で何度か取引された銘柄が現物でも取引され、利益が生じていたところ、判決は、これも同じ担当者によってなされた取引であることを理由に、これらの取引による利益を損害額から控除した。(過失相殺7割)。
 過当取引事案について、過当性等の要件論を正面から論じた裁判例の1つであり、売買回転率6が一般的な過当性判断の基準数値となることを肯定している点も、参考になる。