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解    説

■判  決: 大阪地裁平成16年6月30日判決

●商  品: 仕組債(株価連動債・EB)
●業  者: 国際証券(現・三菱証券)
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 906万8928円
●過失相殺: 6割
●掲 載 誌: セレクト24・220-頁
●審級関係: 控訴

 事案は、信用取引を含む長い証券取引経験を持ち、相応の資産を有していた原告(元保険会社支社長・取引当時は無職)が、勧誘により、証券の売却で得た1億0080万円を1つのEB(対象株式はソニー株)に注ぎ込み、株式償還を受けて損失を被ったというものであった。
 判決は、EBの購入者はプット・オプションの売主に類する立場にあり、EBのクーポンはこのような立場を引き受けたことの対価としての側面を有するとした上で、原告の取引経験等から適合性原則違反は否定したものの、説明義務の内容につき、@本件EBは、元本が保証されるものではなく、参照日において転換対象株式の株価が転換株価を下回った場合、株価の下落した転換対象株式であるソニー株式で償還を受けることとなり、株価下落リスクをそのまま引き受けることになること、A本件EBの購入者は、本件EBを償還期日前に原則転売できないので、本件EBの額面金額と転換対象株式の株価との差額に相当する評価損につき、投資者が軽減ないし回避する方法はないことを理解することが必要不可欠であるが、これにとどまらず、さらに、B本件EBの高利率と株価下落リスクとの関係、すなわち、本件EBの利率が高いということは、株価下落リスク、株式償還による元本割れのリスクが大きく、その負担を投資者が引き受けることの対価たる側面を含んでいることについても、投資者が具体的に理解している必要があり、販売者である証券会社及び使用人は、投資者に対し、これらの点について、理解させるため適切な事項について説明ないし情報提供をすべき義務を負うというべきである、と判示した。そして、@Aの説明はあったが、Bの説明はなかったとして、説明義務違反が肯定された。
 大阪地裁平成15年11月4日判決大阪地裁平成16年5月28日判決とほぼ同様の、表面的なリスク説明にとどまらない商品構造に根ざしたリスクとリターンの関係についての説明義務を肯定した判決であり、相応の取引経験や資産を有する顧客との関係において、かような説明義務が重ねて肯定された点において、重要な意義を有していると言える。