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解    説

■判  決: 大阪高裁平成11年10月12日判決

●商  品: 株式(現物)
●業  者: 野村證券
●違法要素: 断定的判断の提供
●認容金額: 897万5000円
●過失相殺: 3割
●掲 載 誌: セレクト14・55頁
●審級関係: 確定(奈良地裁平成11年1月22日判決の控訴審)

  【一審最終準備書面

 本判決は、適合性原則違反及び断定的判断の提供により、過失相殺を行うことなく損害賠償を認めた奈良地裁平成11年1月22日判決の控訴審判決である。
 控訴審においては、野村證券の他支店での株式取引の他、投資家の過去の数社での株式取引経験や、二部上場銘柄の取引も9回あったことが具体的に指摘された。そのため本判決は、投資家には株式取引についての相当の経験と判断能力があったとして適合性原則違反を否定した。
 しかしながら、本判決は、投資家がこれまで勧誘に依拠して株式取引を行ってきたことを前提に、その属性や本件取引当時の堅実な意向に鑑み、担当社員には大証二部上場銘柄には値動きが激しい傾向があることを十分に説明した上、断定的判断を提供してはならない義務があったとした上で、かかる説明がなされた形跡はなく、最初の買付時には「必ず1万3000円まで上がる、絶対大丈夫だ」、価格上昇時の買増時には「必ず上がる」、価格下落時の買増時には「これが底で必ず上がる」と述べて勧誘したことは、将来の株価の予測を述べたものに止まらず、説明不足をも考慮すると、違法な断定的判断の提供に当たると判示した。
 投資家に一応の投資経験があり、他のこの種勝訴事案のような強烈かつ具体的な断定的勧誘文言がない中、説明不足の中での断定的判断の提供という、いわば「合わせて一本」の構成をとり、過失相殺をも3割に止めた点においては、意義を有する判決であると言えよう。