[検索フォーム]
解    説

■判  決: 大阪地裁平成11年3月30日判決

●商  品: 投資信託、ワラント
●業  者: 山一證券
●違法要素: 適合性原則違反(ワラントのみ)、説明義務違反
●認容金額: 187万0377円
●過失相殺: 7割(投資信託)、なし(ワラント)
●掲 載 誌: セレクト12・525頁、判例タイムズ1027号165頁、金融法務事情1558号37頁
●審級関係: 大阪高裁平成12年5月11日判決で維持(投信の過失相殺5割に減少)・確定

 適合性原則違反、説明義務違反の勧誘が債務不履行となることを明示した上、時効につき違法勧誘被害の実態に即した画期的判断を行った判決である。
  判決は、夫に先立たれた、投資経験も資力も乏しい主婦(取引原資は宝籤の当選金であった)の投資信託取引、ワラント取引につき、前者については適合性に疑義を呈しつつ説明義務違反を肯定し、後者については適合性原則違反、説明義務違反を認めた。
 ところで、本件では、投資信託は平成2年、ワラントは平成5年に売却されていたところ、提訴は平成9年であったため、時効が問題となった。原告は、不法行為の時効につき「知った時期」や権利濫用に関する主張を行い、さらに債務不履行・時効期間は損害確定から10年という主張を行った。これに対して判決は、債務不履行責任につき、「契約準備段階における信義則上の義務」として、証券会社には「当該顧客が自ら明らかにする投資経験、投資目的等に適合した商品を勧める義務」、「顧客が取引の意思決定をするにつき不可欠な要素については説明するべき義務」があるとし、結論としてもワラントにつき適合性原則違反、説明義務違反による債務不履行、投資信託につき説明義務違反による債務不履行を認めた。その上で同判決は、債務不履行の時効の起算点は損害確定時であるとし、さらに本件訴求債権の法的性質は契約内容の核心部分ではなく外縁部分として認められる債務であって、その内容も非定型的で義務の有無、内容の確定に困難な事情が生ずることは否めないため、商事時効の迅速性確保の趣旨は及ばず、時効期間は民法上の原則に戻って10年であるとして、被害救済を実現した(弁護士費用は請求されてはいなかった)。
 なお、他に不法行為では時効が完成しているが、適合性原則違反の勧誘が債務不履行に該当するとして、投資家の請求を認容したケースとして、岡山地裁平成11年9月30日判決がある。
 投資信託についての高率の過失相殺割合のみ疑問が残るが、全体として投資家保護法理の深化に資する重要な判決であると言えよう。