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解 説 |
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■判 決: 大阪高裁平成12年5月11日判決
●商 品: 投資信託、ワラント
●業 者: 山一證券(破産管財人)
●違法要素: 適合性原則違反(ワラントのみ)、説明義務違反
●認容金額: 248万0877円
●過失相殺: 5割(投資信託)、なし(ワラント)
●掲 載 誌: セレクト16・224頁
●審級関係: 大阪地裁平成11年3月30日判決の控訴審・確定
【地裁・高裁合体版判決全文】(PDF)一審判決は、損害確定後ワラントにつき4年、投資信託につき7年が経過していた事案において、適合性原則違反、説明義務違反の勧誘が債務不履行となることを前提に、時効を損害確定から10年として被害救済を果たした。その控訴審判決たる本判決は、一審判決のポイントをすべて維持した上で、投資信託に関する過失相殺を一審の7割から5割に減少した(山一證券の破産に伴い請求は債権確定請求に変更されている)。
@ まず本判決は、証券会社側からの、小額(100万未満)の国内ワラント投資は不適合ではないとの主張を、「一般には小額と評価されるものであったとしても、なお被控訴人にとって適合性はなかったというべきである」として、ワラントにつき適合性原則違反、説明義務違反を認め、過失相殺も否定した。
A 投資信託についても、顧客が利回りの変動があることは認識していたこと、小さくではあるが元本割れのリスクが記載されたリーフレットを交付されていたことを前提としつつ、5段階で危険の大きな方から2番目に分類されることを重視して説明義務違反を認めた。
B 時効との関係においては、まず、「契約準備段階における信義則上の義務」として不適合商品の勧誘を回避する義務、説明義務があるとし、債務不履行構成を肯定した。
その上で、商法522条(5年の商事時効)の適用の有無につき、本件債権は購入契約によって生じたものでも、履行不能の場合のように購入契約による債権が変形したものでもなく、「購入契約に向けた準備段階における信義則上の義務違反から発生したもの」であるから、必ずしも商行為に属する法律行為から生じたもの又はこれに準ずるものとは言い難いとした。そして、商法522条の趣旨は商取引における迅速性確保にあるところ、「本件訴求債権の内容は非定型的で、訴求するとしてもその義務の有無、内容の確定など困難な事情が生じ、一般の商取引におけるような迅速性を要求することが妥当か否か疑問が残る」として、同条の趣旨は及ばず、時効期間は民法の原則に戻って10年であるとした。(時効は損害確定時から進行するとの点も一審判決の判断がそのまま維持された)。
時効に関する画期的判断をはじめ、違法勧誘につき高裁レベルで初めて過失相殺が否定された点、高率(7〜8割)の過失相殺が当然であるかのごとき傾向があった投資信託の説明義務違反についても過失相殺割合が減じられて5割認容となった点において、極めて重要な判決であると言えよう。