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解    説

■判  決: 東京高裁平成29年10月25日判決

●商  品: 株式(信用取引)
●業  者: 野村證券
●違法要素: 過当取引
●認容金額: 4343万8669円
●過失相殺: 7割
●掲 載 誌: セレクト54・20頁
●審級関係: 静岡地裁浜松支部平成29年4月24日判決の控訴審

 歯科医師として歯科医院を開業していた顧客が、平成21年から同23年にかけて勧誘により行った信用取引につき、過当取引の違法性を認めた静岡地裁浜松支部平成29年4月24日判決の控訴審判決であり、被告証券会社の控訴が棄却されて一審判決が維持された。
 一審判決は、過当取引につき、いわゆるチャーニングの法理の要件に依拠するのではなく、「顧客の投資経験、証券取引の知識、投資意向、財産状態等に照らして、銘柄数、取引回数、取引金額、手数料等において社会的相当性を著しく逸脱した過当な取引を行わせたときは、当該行為は不法行為法上違法となる」と判示しており、適合性原則の量や頻度の側面を基本としつつ「手数料等」をも勘案した違法類型を肯定している点において、様々な事案に応用できる意義のある内容となっていたが、本判決も、かかる判断をそのまま維持している。
 また、本判決は、証券会社からの、各取引は一審原告の強烈な取引提案の要求によるもので証券会社担当社員が主導したものではないとの主張や、信用取引の目的や性質についての検討もなく、単に取引銘柄数、取引回数、保有期間、年次回転率、取引金額、差引損失、損失に対する手数料の割合等の数字によって、社会的相当性を著しく逸脱した過当な取引に当たる旨認定した点は不当である旨の主張に対し、以下のとおり実に適切な判示を行っている。
 「しかし、ときに一審原告の要求が強烈なものとなる場合もあったことは否定できないが、その実態は、証券取引の専門家である一審被告担当者に対して損失の回復のための提案を一方的に期待するものに過ぎないのであって、前記認定事実によれば、個々の取引について承諾はするものの、一審原告は、飽くまで一審被告担当者の提案頼みの受け身の姿勢であり、本件信用取引については、全体を通じて、一審被告担当者が主導したことを否定することはできない。そして、本件信用取引の目的、態様、取引回数、手数料額等の取引の状況を踏まえれば、一審被告担当者が主導した本件信用取引は、社会的相当性を逸脱した違法なものというべきであるから、一審被告らの主張は採用することができない。」