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解 説 |
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■判 決: 東京高裁平成28年11月30日判決
●商 品: その他(匿名組合型不動産投資ファンド)
●業 者: 高木証券
●違法要素: 適合性原則違反
●認容金額: 1213万5965円
●過失相殺: なし
●掲 載 誌: セレクト52・249頁
●審級関係: 確定
両親を亡くした未成年者の後見人が、被告証券会社から勧誘を受けて、匿名組合型の不動産投資ファンド(レジデンシャル−ONE)への出資を行い、未成年者に損失が生じたという事案について、適合性原則違反を認めて損害賠償請求を認容(過失相殺なし)した東京地裁平成28年6月28日判決の控訴審判決であり、被告証券会社の控訴が棄却されて一審判決が維持された。
なお、一審判決は極めて簡略な判示内容で適合性原則違反を認めていたが、本判決は大幅な補正(補充)を行っている。具体的には、本判決は、まず最高裁平成17年7月14日判決が明らかにした適合性原則違反が不法行為となる要件を示した上で、本件ファンドの商品特性につき、レバレッジ効果による大幅な元本割れのリスクがあり元本をすべて失うおそれもあることや、途中解約ができず損失の拡大を防ぐことができないことを指摘し、さらに投資家を保護する措置によりリスクを減少させている類似の不動産ファンドとの比較も行って、本件ファンドは相当にリスクの大きい商品であったとした。他方で、本判決は、未成年後見人は善管注意義務を負い、未成年者の財産で元本割れのリスクがある商品を購入するのは相当でないし、リスクの大きい商品に投資することは許されないとした。そして本判決は、以上から、本件取引は未成年者の意向と実情に反する明らかに過大な危険を伴う取引と言わざるを得ないところ、被告証券会社の担当者は未成年後見人としての取引であることを認識しながら勧誘を行って取引をさせたのであるから、当該担当者の勧誘行為は適合性原則に違反するものとして不法行為に該当すると判示した。
以上に対し、被告証券会社からは、運用対象の資産は、もともとかつての未成年後見人が未成年名義の取引口座での運用を予定して未成年に贈与したものであったから、未成年後見人に善管注意義務はなく適合性原則違反もないとの主張や、元本の大きな毀損はリーマンショックによるものであるとの主張が行われたが、いずれも排斥されており、さらに、行為能力のある未成年後見人との間では通常の態様で取引することができるとの被告証券会社の主張に対しても、本判決は、「未成年後見人がリスクの大きい商品に投資してはならないとの責務を負うものであることは上記(3)イで判断したとおりであるところ、未成年後見人と取引する相手方も、取引の効果の帰属主体が未成年者であり、未成年後見人の責務が上記のとおりであることは容易に認識しうるものであることに鑑みると、未成年後見人がリスクの大きい商品に投資することを了承したことをもって、取引の相手方が免責されると解するのは相当でない」(原文のまま)と判示している。
加えて、過失相殺についても、被害者側の過失が一切認められないのは不公平であるとの被告証券会社の主張に対し、本判決は、「本件取引の勧誘自体が許されない本件においては、未成年者であった被控訴人の財産保護が図られるべきであって、被害者側の過失相殺を理由に損害の一部を被控訴人に負担させることは、かえって公平の理念に反するというべきであり、控訴人の上記主張は採用できない」とした。
未成年後見人による取引であることを認識して勧誘を行っている以上、未成年後見人の了承や落ち度を本人(当時の未成年者)に転嫁できないという適切な判断が、一審判決以上に明快に判示されており、今後様々な被害事案に応用されるべき有意義な判決である。(なお、一審判決の損害の認定や遅延損害金の起算点の判断も、そのまま維持されている。)