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解    説

■判  決: 東京地裁平成28年6月28日判決

●商  品: その他(匿名組合型不動産投資ファンド)
●業  者: 高木証券
●違法要素: 適合性原則違反
●認容金額: 1213万5965円
●過失相殺: なし
●掲 載 誌: セレクト51・1頁
●審級関係: 控訴


 事案は、両親を亡くした未成年者の後見人が、被告証券会社から勧誘を受けて、匿名組合型の不動産投資ファンド(レジデンシャル−ONE)への出資を行い、損失が生じたというもので、上記未成年者自身が成年に達した後に被告証券会社への損害賠償請求訴訟を提起したというものであった。(なお、レジデンシャル−ONEについては、大阪地裁平成22年10月28日判決を第一弾として、既に多数の顧客勝訴判決が下されているので、商品内容や問題点及び販売の実情等については、これらの判決を参照されたい。)
 判決は、本件ファンドについて、「大きな収益を得られる可能性がある一方で、元本保証がされているわけではなく、出資者において大きな損失を被るリスクがある投機性の高い商品であると認められる」とした上で、「未成年後見人の財産を同人に代わって善良な管理者の注意をもって管理する義務を負う未成年後見人が、未成年被後見人を代理してこのような投機性の高い商品に対する投資を行うことは、およそ許されないといわなければならない。他方、証券会社等の担当者においても、未成年後見人が未成年被後見人を代理して当該取引を行うことを認識した以上、当該取引の勧誘をすることはおよそ許されないのであって、これに反し、当該取引の勧誘をした場合は、適合性原則に違反するものとして不法行為責任を免れないというべきである。」として、適合性原則違反による不法行為の成立を認めた。
 なお、被告証券会社からは、未成年後見人の過失を根拠に5割の過失相殺がされるべきであるとの主張がなされていたが、判決は、「未成年後見人の落ち度を原因として、未成年被後見人に不利益が転嫁されるいわれはない」として、過失相殺を否定している。
 また、損害についても争いがあり、被告証券会社は手数料部分は不法行為との因果関係が認められないと主張したが、判決は、購入時の代金支出で損害が生じたことを認定した上で、「本件取引の勧誘をしてはならなかったのであって、本件取引をしなければ当該金員を支出することもなかったことは、本件ファンドへの出資金と手数料で変わるところはない」として、被告証券会社の主張を排斥した。その上で、「損益相殺的処理」として、税引後の償還金や配当金が損害から控除されて(つまり源泉徴収された税金部分は顧客の負担とされていない)、損害額が認定されている。さらに、遅延損害金も、「原告の損害は、本件取引により金員を支出した時点で発生している」との理由が明示された上で、遅くとも最後の本件取引の日から発生するとされている。
 一見すれば当然の結果とも思われるが、未成年後見人による取引であることを認識して勧誘を行っている以上、かかる勧誘に応じて取引を行ってしまった未成年後見人の落ち度を本人(当時の未成年者)に転嫁できないという適切な判断が明示的に行われている点や、このような「行ってはならない勧誘」のケースでは支出自体を損害と考えて損害算定を行うべきであることが明示されている点において、意義のある判決と言える。