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解    説

■判  決: 前橋地裁平成24年3月22日判決

●商  品: 投資信託
●業  者: みずほ証券
●違法要素: 無断売買
●認容金額: 210万5880円
●過失相殺: −
●掲 載 誌: セレクト43・153頁
●審級関係: 東京高裁平成24年8月30日判決で維持 


 事案は、身体障害により要介護状態にあった顧客が、被告証券会社に外債の償還金を返還を求めたのに対し、被告証券会社は顧客の了解を得て同償還金を外国投資信託(USドル外貨建MMF)の購入代金に充てたとして争ったというもので、判決は、顧客が外国投資信託の購入を注文したとは認められないとして、顧客の請求を認容した。(なお、上記外債の償還金は、顧客の指定がない限り円貨で償還されることとなっていたところ、本件では指定があったことを前提にドルで償還されており、かような顧客の指定の有無も争われた。)
 判決は、被告証券会社から提出された「アプローチ履歴」、「自動車運転日誌」、「顧客情報となる書類の交付(持出・来店)管理表」の記載内容が、おおむね証券会社担当社員の供述に一致することを認めつつも、担当社員の供述は金融商品取引において最も重要な本人の意思確認に関する部分において変遷しており信用性に乏しいと指摘し、さらに、「アプローチ履歴」は担当社員が入力した情報を正確に保持しているにすぎず、その記録内容の真実性を担保するものではないとし、「自動車運転日誌」、「顧客情報となる書類の交付(持出・来店)管理表」も、顧客と面会した事実や顧客が指定や注文をした事実そのものを記録したものではないことから担当社員の供述の真実性を裏付ける資料とはなり難いとして、顧客による指定や注文の事実を認めるに足りる証拠はないと判示した。
 また、被告証券会社は、顧客の夫が代理人として指定や注文を行ったとの主張も行っていたが、判決は、重篤な疾病を患っている顧客が夫を通じて資産管理を行っていたと推認することも不合理とはいえないとし、さらに夫が顧客の取引に関与していたことも認めつつ、本件に関する委任状等の不存在を指摘した上で、夫が一定程度の関与を果たし、取引の補助に当たっていたとしても、そのことが直ちに顧客が夫に対して本件の代理権を授与していた事実を基礎付けるとはいえないとし、かような代理権授与に関して担当社員が供述する内容が「アプローチ履歴」に記載されていないこと、本件は日常家事代理の範囲内の行為ではないことなどをも指摘して、夫への代理権授与や代理行為を認めるに足りる証拠はないとした。その他、被告証券会社は、追認や信義則違反の主張も行っていたが、判決はこれらの主張も排斥している。
 以上により、判決は、顧客の預託金返還請求を認め、被告証券会社に対し、上記外債の償還金を償還時の為替レートで円換算した金額の支払いを命じた。