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解    説

■判  決: 大阪高裁平成24年3月14日判決

●商  品: その他(匿名組合型不動産投資ファンド)
●業  者: 高木証券
●違法要素: 説明義務違反、その他(目論見書の重要事項の記載の欠落等)
●認容金額: 359万0991円、980万0694円、943万1681円、525万2429円、1997万9827円、
       916万0616円、158万8684円
●過失相殺: 2割
●掲 載 誌: セレクト42・383頁
●審級関係: 
大阪地裁平成23年4月28日判決の控訴審判決、上告・上告受理申立


 匿名組合型の不動産投資ファンド(レジデンシャルワン)に関する第2弾判決である大阪地裁平成23年4月28日判決の控訴審判決であり、7名の原告全員について、説明義務違反による不法行為をはじめとする一審判決の判断が維持された上で、一審判決の3割の過失相殺が2割に減じられて、認容額が増額されている。
 また、本判決は、顧客側が控訴審で行った金融商品取引法第17条違反(目論見書の重要事項の記載の欠落等)による請求について、一般の投資家が目論見書や商品説明書の記載のみによってレバレッジリスクの内容を理解することは困難で、担当社員による具体的な補足説明が必要不可欠であったことを認定して、証券会社が使用した目論見書等は、重要な事項が欠落している、あるいは、誤解を生じさせないために必要な事実の表示が欠落しているとして、同法17条違反による損害賠償義務の発生を認めている(但し、その損害額は説明義務違反による不法行為に関して認められる金額を超えるものではないとして、結果的には不法行為による損害賠償請求が肯定されている)。このように目論見書等におけるリスクの記載内容に関しての法定の損害賠償義務が肯定された点は、同種商品の多数の被害の救済に有益であるだけでなく、今後の証券取引被害の救済に関しても重要な意義を有すると思われる。
 さらに、本件においては、証券会社は、いわゆる西武鉄道事件についての最高裁平成23年9月13日判決を根拠に、レバレッジリスクに関する説明義務違反による損害には、レバレッジリスクとは無関係な市場要因による不動産価格の下落率相当分(平均すると3割5分)は含まれないと主張していたが、判決は、途中解約や売却処分等ができないレジデンシャルワンにおいては、投資するかどうか、どの程度投資するかを判断するについての情報(特にリスクに関する情報)が極めて重要であったことや、十分な説明がなされていれば顧客らはレジデンシャルワンに投資しなかった可能性が高いことを指摘した上で、「レバレッジリスクに関する説明義務違反と違法な勧誘に誘発されてレジデンシャルワンに投資したこと自体により被った損失(レバレッジリスクによる損失のみならず、レバレッジリスクとは無関係な市場要因による不動産価格の下落率相当分)との間には相当因果関係がある」と判示して、証券会社の上記主張を排斥しており(上記最高裁判決との関係については、事案の性格と内容が大きく異なっており、直ちに本件に援用することは相当でないとの判断が示されている)、これも今後の参考とされるべき判断であると言える。