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解    説

■判  決: 大阪高裁平成22年10月29日判決

●商  品: 株式
●業  者: 高木証券
●違法要素: 適合性原則違反、説明義務違反、過当取引
●認容金額: 564万5577円
●過失相殺: 1割
●掲 載 誌: セレクト38・85頁
●審級関係: 大阪地裁平成22年5月12日判決の控訴審、確定


 身体に障害があり、抑うつ状態との診断を受けて通院もしており、収入は年金のみで、金融資産は800万円程度の預金しかなかった顧客が、株取引(途中から信用取引を開始)によって、700万円を超える損失を被ったという事案において、一審判決が信用取引に関する適合性原則違反、説明義務違反、過当取引を認めてその損害の8割の賠償を認めたのに対し、本判決は、一審判決の違法判断を是認しつつ、過失相殺を1割に減じて損害の9割の賠償を命じた(但し、現物株取引については、一審判決と同様に、賠償の対象と認められなかった)。
 本判決は、一審判決の違法判断に付加して、初回の信用取引からいきなり757万5000円という、それまでの約2年4か月間の株式現物の購入総額をも上回る高額の買建てを一度にしたのを皮切りに、その後も高額の信用取引が行われて大きな損失が生じた点につき、「本来、顧客が、信用取引を始めたばかりの段階で、かかる高額の取引の委託をした場合、一審被告としては、リスクの大きさを説明して顧客に再考を求めるなど、適切な助言をすべきであるところ、一審被告が、一審原告にかかる助言をしたと認める証拠もなく、高額の信用取引の委託に応じ、短期間のうちに、一審原告に多額の損失を被らせたものである」との判示や、「一審原告が信用取引のリスクを十分に理解していたのであれば、いきなりかかる高額な取引をすることはなかったというべきである」との判示を行い、さらに信用取引の手数料総額が約271万円に達していたことの指摘を行っている。
 そして、本判決は、信用取引開始のための諸手続のすべてが勧誘が行われたその日のうちになされた上に、証券会社担当社員は顧客に2000万円もの金融資産がないことを容易に理解し得たのに、顧客が同額の金融資産を有していると報告して証券会社内の内部審査を経ており、これによって顧客は本来はできなかった高額の信用取引をできるようになったことや、顧客が信用取引のリスク等についての理解が十分でないまま初回から高額取引を行い、それに続く短期間のうちにも高額取引を行ったことについて、前記の助言がなされず、これらの取引によって500万円以上の損失が発生していること、その後の信用取引も実質的には担当社員の主導によってなされ、顧客は勧誘されるがままの短期間の極めて多数の信用取引によって約271万円もの手数料を支払ったことなどから、証券会社担当社員の違法性の程度は強いとし、他方で、顧客の属性も考慮すると顧客の過失相殺事由はかなり小さいとして、過失相殺を1割とした。