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解    説

■判  決: 大阪地裁平成22年4月15日判決

●商  品: 株式
●業  者: SMBCフレンド証券
●違法要素: その他(著しく過大な危険を伴う取引の積極的勧誘)
●認容金額: 805万4308円
●過失相殺: 7割
●掲 載 誌: セレクト37・1頁
●審級関係: 大阪高裁平成22年9月16日判決で維持


 事案は、元工員で既に勤務先を定年退職していた顧客が、平成17年12月以降の勧誘による一連の株取引(途中から信用取引も開始された)による損失について、過当取引、一任売買、適合性原則違反、仕切拒否を主張して損害賠償を求めたというものである。
 まず、判決は、証券会社又はその使用人には、「当該投資者にとって明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘したり(適合性原則違反等)、投資者の意向に明らかに反し、あるいは、自由な意思決定を妨げる行為(投資者の意向に反する一任売買や仕切拒否等)を行うなど、社会的に相当性を欠く手段又は方法による勧誘を回避すべき注意義務がある」とし、かかる注意義務違反の有無等は、当該投資対象の特性ないし一般的な危険性の有無及び程度、その周知度、顧客の投資経験、知識、判断能力、投資意向、当該勧誘が行われた際の具体的状況等に照らして判断されるべきであるとした。
 そして判決は、以上の諸要素について順次検討を加え、取引の特性については、顧客が株取引を終了する意向を伝えるまでの14ヶ月間の新規件数が146件、決済件数が143件、年次資金回転率が19.37回で、保有期間10日以内のものが6割を超えることを認定し、僅かでも利益が出れば決済するものの、短期間での利益取得ができなかった結果、比較的長期間の保有を余儀なくされた株式も存在していた状況で取引が推移しており、このような取引手法は、取引を全体として見た場合、売買利益に比して手数料の負担が増大し、利益確保による損失補填の効果を減殺させ、また、通算損益の予測を困難にする側面があるとした。さらに、顧客の経験等については、僅かな取引経験しかなく知識も乏しかったとして、本件取引はかような顧客の取引経験とは著しく乖離した態様のもので、著しく過大な危険を伴うものであったとされ、投資意向についても、顧客の意向が本件取引開始時までに短期かつ積極的なものに変化したと認めることはできず、担当者らの勧誘に従った結果として取引が増大していったとされた。加えて、勧誘状況等については、取引の具体的な手法等については特に協議することもなく継続されてきたこと、担当者らが顧客を訪問した場合も屋外で立ち話をする程度で、担当者が持参した資料を持ち帰って検討することもなかったこと、電話勧誘については、その大半が十数秒から数分の短時間の通話によるものであったこと、顧客は勧誘を断ることもなく承諾してきたこと、が認定された。
 以上により判決は、顧客が被告証券会社において約3000万円の預かり資産を有していたことや、本件取引の個々の商品に対しては投資判断の能力があり、短期間で利益を取得したことで投資意向がある程度積極的になっていたと言えるとしつつも、本件取引内容は、顧客の取引経験や知識との比較において著しく過大な危険を伴うもので、投資意向とも乖離しており、その勧誘態様も、著しく過大な危険を伴う取引に顧客を引き込む態様のもので、到底顧客による自由かつ責任ある判断を担保する態様であったとはいえないとし、前記注意義務に違反した(著しく過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘した)ものとして、不法行為法上違法となるとした(過失相殺7割)。