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解    説

■判  決: 大阪高裁平成20年3月25日判決

●商  品: 株式、投資信託
●業  者: SMBCフレンド証券
●違法要素: 適合性原則違反、過当取引
●認容金額: 503万5773円
●過失相殺: 8割
●掲 載 誌: セレクト31・1頁
●審級関係: 
大阪地裁平成19年10月17日判決の控訴審、上告等の却下等により確定


 本判決は、原判決の適合性原則違反に関する判断をそのまま維持した他に、原判決が、顧客の意思に反していないことを主たる理由として否定した過当取引についても、違法性を肯定した。
 すなわち、本判決は、本件取引の年次回転率が16.99であり、保有期間14日以内の取引が約79.2%を占めること、顧客は当初は積極的な投資を行う意向はなく、担当社員の勧誘によって銘柄選択や規模(投資額)、投資時期が決められ、顧客はこのような個別取引についての具体的相当性を判断し得る能力を持っていなかったこと、相場取引自体によっては損失が出ていなかったものの手数料負担も含めた全体としては大きな損失が生じていたことを顧客が本件取引の継続過程で把握していたかは疑問であることなどを指摘し、本件取引は個人投資家にとっては異常と言うべき取引回数・取引規模・取引頻度であったこと、顧客が個々の取引の相当性を具体的に判断できるだけの能力を備えておらず、担当社員を中心とする証券会社が個々の取引を行うか否かの実質的・具体的判断を行っていたことなどから、口座支配性や悪意性・過度性を認め、過当取引の違法性を肯定した。
 但し、このように違法性判断のレベルでは一審判決の誤りを正して現在の判例法理の水準に沿った適切な判断が示され、証券会社側の手数料稼ぎ目的による適合性原則違反・過当取引が明確に肯定されたにもかかわらず、その一方では、何ら説得力のある理由が述べられないまま、「取引を止めなかった、質問を行わなかった」といった顧客の消極的な落ち度ばかりが強調されて、原判決の8割もの過失相殺はそのまま維持されており、この点においては極めて不当と言わざるを得ない判決となっている。