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解    説

■判  決: 大阪高裁平成17年7月28日判決

●商  品: 株式(信用取引)
●業  者: 東洋証券
●違法要素: 過当取引
●認容金額: 2499万1438円
●過失相殺: 5割
●掲 載 誌: セレクト26・72頁
●審級関係: 大阪地裁平成16年1月28日判決の控訴審

 原判決が適合性原則違反による違法を肯定したのに対し、本判決は、適合性原則違反が不法行為となることは肯定しつつ、投資家の取引経験や資産状況から、信用取引を勧誘したこと自体は不適当なものであったとは言えないとした。
 次に、本判決は、証券取引、とりわけ株式取引の構造と実情から、「投資家の危険において証券会社が利得するという関係が生じるおそれがある」とした上で、従前の判例法理と同様に、過当性の要件、口座支配の要件、悪意性の要件の3要件が充たされるときは、当該取引は私法上も違法となると判示した。その上で本判決は、まず、取引全体の規模や頻度、とくに資本回転率が22回(証券会社の主張でも11回以上)であることや30カ月以上もの間1億5000万円程度の投資がほぼ常時行われていたこと、日計りが7.2%、保有日数10日未満の取引が67.9%であるといった点から過当性を肯定した。そして、銘柄数が190以上であることや短期売買、ナンピン買い、出し入れ取引、買直し、途転などの複雑な取引が繰り返されていること、投資家が海外旅行中にも取引が行われていたことなどから、投資家自身の適切な投資判断によって行われた取引とは言えず、証券会社の主導の下に行われたものであるとして口座支配の要件も肯定し、投資家が勧誘をほとんど断らずに依存していたことや、7500万円を超える多額の手数料(手数料を平均投資額で除した手数料率は90%を超えていると認定)から、証券会社は投資家の利益を犠牲にして自己の利益を図ったものというべきであるとして、悪意性も肯定され、不法行為による損害賠償が認められた。
 なお、取引期間中に証券会社の担当者が交替している点については、原判決の、全体を一体のものとして考えるのが取引の実態に即しており妥当というべきであるとの判示がそのまま維持されている。
 また、過失相殺は5割に増えたが、原判決が否定した、現物株を保有し続けたことによる損失の拡大につき、「現物株の取得も信用取引の結果であり、その購入額と現物株の時価との差額が損害となる」として、口頭弁論終結時の株価を基準とした含み損も因果関係のある損害と認められたため、認容額全体は増額となった。(過当取引の損害は取引上の損害か手数料かという点は、とくに議論も異論もなく、取引上の損失が損害であるとされている。)