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解    説

■判  決: 大阪地裁平成16年1月28日判決

●商  品: 株式(信用取引)
●業  者: 東洋証券
●違法要素: 適合性原則違反
●認容金額: 2062万3189円
●過失相殺: 3割
●掲 載 誌: セレクト23・223頁
●審級関係: 大阪高裁平成17年7月28日判決で過当取引により一部認容(認容額増額)

 事案は、自宅でのピアノ教師以外に職歴のない主婦が、自宅を一戸建からマンションに買い替えた後の余剰金に従前からの預貯金を併せた約8000万円(本来は老後の生活資金と考えられていた)を原資に、証券取引を行っていたところ、平成8年に夫が死亡した後、平成9年10月から勧誘によって株式信用取引を開始することとなり、以後、平成12年6月までの間、多数回の信用取引が行われて、多額の損失が発生したというものであった(原告の主張によれば、年次回転率は平均22.6回)。
 判決は、上記期間中の取引につき、株式総購入額が47億7145万1500円(年平均17億8929万4312円)にも上り、購入回数も極めて多数回で、銘柄数は190以上に達し、手数料負担も極めて大きかったこと(総額約7507万円・年平均2800万円)、日計り商いが7.2%、保有日数10日未満の取引が67.9%であったこと、短期売買・ナンピン買い・出し入れ取引・買い直し・両建・途転等の種々の複雑な取引がなされていること、などを指摘して、「原告の資産及び収入などの経済的状況、家族関係並びに預け資産の性質などに照らして、著しく大規模かつ頻回に過ぎたものであった」「原告の証券取引の知識及び経験から考えて、原告自身が適切な投資判断をすることが極めて困難な取引であった」と判示し、適合性原則違を肯定した(過失相殺3割)。
 なお、証券会社側は、上記取引期間中に証券会社の担当者は交替しており、最初の担当者が担当していた期間中は損失が顕在化していなかったことから、担当者毎に分断して不法行為の成否を検討すべきである旨を主張していたが、判決は、「全体を一体のものとして考えるのが、取引の実態に即しており、妥当というべきである」と判示して、かかる主張を排斥している。
 過当取引事案について、過当性等の要件論を個別に検討するのではなく、適合性原則違反を肯定するアプローチをとった裁判例の1つである。