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解    説

■判  決: 大阪高裁平成16年7月28日判決

●商  品: 投資信託
●業  者: 日興証券(現・日興コーディアル証券)
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 137万0752円(2名分)
●過失相殺: 8割
●掲 載 誌: セレクト24・136頁
●審級関係: 神戸地裁尼崎支部平成15年12月26日判決の控訴審判決

 昭和62年から勧誘により株式投資信託の取引が始まり、以後、多数の株式投資信託(すべて国内株を対象とするもの)の売買が繰り返されて損失が生じた事案につき、一審判決と同様、説明義務違反を認めた判決である(過失相殺も一審と同様であるが、保有したままの投資信託の価格が控訴審の口頭弁論終結時までに上昇し、請求額の減額が行われたため、認容額は一審判決より減少している)。
 本判決は、まず、被控訴人(投資家)は通常の水準の投資知識を有していた、余裕資金をもって銀行預金より有利な利殖をするため敢えて投資信託を選択したなどと認定して適合性原則違反を否定し、説明に関しても、被控訴人は元本割れの可能性があることを認識できており、この点に関しての説明義務違反はないとした。しかし、本判決は、被控訴人は安定志向が強く元本維持に強い関心を有する顧客であったこと、その反面、最終的な決定は担当社員に任せる傾向があり、担当社員の勧めるままに各投資信託を購入していたこと、当該担当社員が勧めた商品はほとんどが成長型の高リスク商品であり、前任者が担当していた時期とは取引の実態、傾向が異なること、担当社員は安定型・安定成長型・成長型といった区分の説明を行っていないこと、を前提に、「仮に対象商品の性質、権利の内容のみならず、リスクの程度について分かりやすく説明が尽くされていたならば、被控訴人○○は、△△社員の勧める高リスク商品の頻繁な取引を必ずしも希望せず、より安定的な商品を求めていた可能性もあったと認められるのであって、リスクを異にする多様な商品の利害得失を比較説明した上で商品を選択する機会を与えることがなかった点において、△△社員の対応は、投資の適否につき的確な判断をするに足る十分な情報を与えなかったものというべきである」と判示した。さらに、投資信託の頻繁な乗り換えが行われていることにつき、かような処理の利害得失を、被控訴人の的確な投資判断が現実に可能な程度までに十分説明し、被控訴人がこれを理解・納得していたとは考えにくいこと、受益証券説明書が一度も交付されていないことも指摘され、これらを総合考慮すれば、当該担当社員が取引を引き継いだ当初から、説明義務を尽くさない違法があったとされた。