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解    説

■判  決: 神戸地裁尼崎支部平成15年12月26日判決

●商  品: 投資信託
●業  者: 日興証券(現・日興コーディアル証券)
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 190万0566円(原告2名分)
●過失相殺: 8割
●掲 載 誌: セレクト23・297頁
●審級関係: 大阪高裁平成16年7月28日判決で維持(但し請求の減縮により認容額は減少)

 事案は、大学卒業後、就職して間もない独身女性が、昭和60年から被告証券会社で公社債投信の取引を開始し、途中からは実妹名義の取引も行うようになったところ、昭和62年から勧誘により株式投資信託の取引が始まり、以後、多数の株式投資信託の売買が繰り返されて損失が生じたというもので、とくに株式相場の下落が顕著になった平成5年頃からは、損を取り戻すためによりハイリスクの株式投資信託への乗換取引が行われていた(なお、株式取引が行われたことや、その勧誘が行われたことは一度もなかった)。
 判決は、かような取引が継続された経緯につき、原告は自分が購入する商品に元本保証がないことは理解していたが、元本割れが現実化しなければよく、大手証券会社の社員であればそのような商品を提供してくれるはずであるとの期待の下に、取引を継続していたものの、対象商品の吟味選択を自分で行うことができなかったため、担当社員の判断をそのまま追認する形で取引を続けていかざるを得なくなったと認定した。また、判決は、各商品の勧誘にあたっては、口頭説明の他、事前にも事後にも商品の内容を分かりやすく記載した文書が送付されていたとする一方、受益証券説明書は交付されておらず、説明の際に「ハイリスク・ハイリターン」といった横文字はあまり使用されず、安定型・安定成長型・成長型といった区分も説明されていなかったとした。
 その上で判決は、適合性原則違反や断定的判断の提供は否定したものの、説明義務違反については、対象商品が株式投資信託であることを始め、運用方法や仕組み、予想利回り、元本割れリスクの存在等につき一応の説明は尽くされており、顧客自身の判断で購入が行われたとしつつも、「投資取引において求められる説明義務とは、それを尽くしたとされることにより、投資家に自己責任の原則を適用することを可能ならしめるものであるから、単に機械的に対象商品の仕組みや危険性を説明すればそれで足りるというものではなく、説明を受ける投資家自身の属性をも考慮に入れ、その者が投資の適否につき的確な判断を自らすることができるだけの情報が提供されていなければならない。」「主体性の乏しい顧客に対しては、通常以上の努力を払って投資の仕組みや危険性を説明し、取引の結果は良否ともども本人に帰属するものであることを自覚させるに足るだけの注意喚起をした上で勧誘するのでなければ、必要な説明義務を尽くしたとはいえない。」と判示し、本件ではかような説明が不十分なまま取引が継続されていたとして、説明義務違反があったことを認めた(過失相殺8割)。