[検索フォーム]
解    説

■判  決: 東京高裁平成15年11月12日判決

●商  品: 株式
●業  者: 野村証券
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 600万円
●過失相殺: 8割
●掲 載 誌: 判時1859・144頁
●審級関係: 東京地裁平成15年4月21日判決の控訴審、確定

 未上場企業の新株(第三者割当)の勧誘による被害(発行企業が倒産)につき、説明義務違反等を認めた原判決の結論を維持した判決である。
 本判決は、新株引受は従来の証券取引とは性質が異なる上、証券会社従業員が顧客に対して情報提供をした行為であるとの側面は否定できないとして、本件引受について証券会社と顧客との間に契約関係が成立するには至っていないとしつつも、証券会社と顧客との従来の取引関係に着目して、両者の間には一定の信頼関係があり、これを基礎とする継続的な取引関係に付随する条理上の義務として、顧客が専門業者の紹介であるからと十分に検討しないで安易に紹介されるまま投資についての判断をすることがないように、証券会社の有している情報で、紹介を受けた顧客が誤った判断をしないために必要な情報を伝える義務があったとした。そして、その説明の内容については、訴外会社の財務状況の厳しさと同社の企業としての将来性をどのように考えていたか、といった点について証券会社担当者らが情報等を有していた点に鑑みて、単にリスクを被る場合がありうることを一般的に説明するに止まらず、従業員が把握していた情報、すなわち「投資することを決断するに当たって消極的に働く主要な要素」についても具体的に説明すべき義務があった、とした。