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解 説 |
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■判 決: 和歌山地裁新宮支部平成15年6月30日判決
●商 品: 株式(信用取引)
●業 者: 環証券
●違法要素: 説明義務違反、断定的判断の提供、事後の助言・情報提供義務違反
●認容金額: 3047万7258円(原告4名分の合計)
●過失相殺: 2割、4割、5割、6割5分
●掲 載 誌: セレクト22・82頁
●審級関係: 大阪高裁平成15年12月26日判決で維持本件は、自営業、歯科医等の4名の投資家が、同一の担当社員にツムラ株及び不動建設株の空売り(信用取引の売建)を勧誘されてこれを行い、損害を被ったとして、提起した訴訟である。なお、いずれの投資家も相応の株式取引経験はあり、1名を除いては、空売りを含む信用取引を行ったこともあった。
判決は、まず、空売りに関し、空買い(買建)のリスクより遙かに大きい青天井のリスクがあることや、株を持たないで空売りをするときには、幾ら高くなっても買い戻すしか決済手段がないことを指摘した上で、一般にリスクが高い取引であるとして説明義務の存在を肯定し、投資家の信用取引経験の有無等は、説明の程度に関して考慮されるに過ぎないことであるとした。そして、担当社員が供述する程度の説明では、到底信用取引の仕組みを理解することはできず、一般的に顧客に信用取引の説明をしたと評価することはできないと判示して、担当社員が空売りのリスクを十分理解せしめるに足る程度の説明をしたと解することはできないと結論付けた。また、判決は、担当社員は、不動建設株及びツムラ株の取組や関連する状況(信用取引の規制等)などについて適切な開示をしなかった上、売り停止に関する正しい知識及び対応方法についての適切な助言ないし指導をしなかったため、投資家らが適切に反対売買する機会を確保できなかったとして、このことも説明義務違反にあたるとした。さらに、その継続的な取引態様からして、担当社員には、勧誘時から決済が済むまでの間、取引上重要な状況(空売りの有利、不利に関する状況など)の変化があれば、その変化を告げるとともに取組及びこれに関連する状況について、適切な措置方法を適切な時期に助言、指導すべき義務があるが、それをしなかったため、投資家らは適切に反対売買する機会を逸したとして、このことも、説明義務の一内容をなす注意義務の不履行となるとした。(なお、判決は、これらの判示の前提として、各投資家の過去の信用取引や空売りにつき、それらが如何なる意向、どの程度の理解によって行われたものであったかにつき、詳細な認定、判示を行っている。)
以上に加えて、不動建設株及びツムラ株につき値下がりを予告した断定的判断の提供があり、高圧的勧誘もあったとされ、これらの勧誘の違法性も肯定された。そして、判決は、担当社員の勧誘行為は証取法157条違反となり、全体的に違法な行為であるとして、不法行為の成立を認めた(各投資家の属性や取引経験等に応じて、2割から6割5分の過失相殺が行われた)。また、投資家の1人に対しては、証券会社側から不動建設株の取引に関する立替金請求が行われていたが、かかる請求は上記損害賠償責任の限度ないし程度において、信義則に反し行使できないとされた。
本判決は、信用取引の空売り(売建)に関しての高度の説明義務を肯定した点において先例的意義を持つ判決であると言える。しかも本判決は、勧誘から決済に至るまでの間の適切な助言ないし指導の義務をも認めている。ワラント被害においては幾つかの判決が同様の注意義務を肯定しているが、株式取引につき本判決のように詳細な判示をもってかかる注意義務が肯定されたのは、初めてのことであると思われる。