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解    説

■判  決: 東京地裁平成15年6月27日判決

●商  品: 株式
●業  者: コスモ証券
●違法要素: 過当取引
●認容金額: 621万4573円
●過失相殺: 4割
●掲 載 誌: セレクト24・1頁、判時1856・122頁
●審級関係: 控訴審で和解成立

 高校教師(女性)たる原告の株式取引(信用取引を含む)被害につき、本判決は、原告の無断売買の主張を退けるとともに、本件取引の違法性の点についても、原告の適合性原則違反、虚偽による勧誘ないし断定的判断の提供、説明義務違反、助言・情報提供義務違反、誠実公正義務違反の各主張をいずれも退けた。
 しかし、過当取引については、一般投資家が証券取引の専門家である証券会社の勧誘ないし助言、指導に依存して取引を行うことが少なくない一方で、証券会社は一般投資家の取引の頻度や取引金額が多いほど手数料収入が多くなり、また、担当者が歩合給の場合は、顧客を過当取引に誘う危険を内在している点を指摘して、証券会社が顧客の取引口座に対して支配を及ぼして、顧客の利益を犠牲にして手数料稼ぎ等の自己の利益を図るために顧客の資産状況、投資目的、投資傾向、投資知識、経験に照らして過当な頻度、数量の証券取引の勧誘をすることは、顧客に対する誠実義務に違反するいわば背任的行為として、私法上も違法と評価すべきであるとした。その上で、本件では、約14か月の間の取引件数が合計119件であるところ、原告の職業柄夏休み期間を除いて原告が担当者と頻繁に連絡を取り合って情報等を入手することは困難であったこと、適合性原則違反とまではいえなくとも原告が高度の投機目的を有する者ではなく、また情報収集能力・分析能力を十分に身につけていたとはいい難いこと、原告が取引のペースが早くてついていけないという苦情を何度か申し入れていること、取引は主に担当者の主導に行われており、利益が上がった際には原告から担当者に謝礼が渡されていた事実から担当者自身も原告が担当者に依存して取引していたことを十分に知悉していたものと認められること、信用取引開始以後の手数料額は個人投資家としては相当多額にのぼっており、損害の少なからざる部分を占めていることを認定した上で、本件取引中原告が信用取引を開始した平成11年8月26日から取引を終了した同12年9月19日までの取引について、過当取引として違法であると認定した。
 但し、損害額については、過当取引が行われた期間中の取引差損全額ではなく、被告証券会社が過当取引によって取得した手数料額であると認めるのが相当とした。
 過当取引の認定に関する判示内容は正当であるが、手数料のみが損害であるとしながら、そこからさらに過失相殺を行った点は、これまでの多数の裁判例(例えば東京高裁平成16年9月15日判決)にも反するものであり、到底支持できないものである。