[検索フォーム]
解    説

■判  決: 大阪地裁平成15年6月26日判決

●商  品: 投資信託
●業  者: 大和證券(株式会社大和証券グループ本社)
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 808万8914円
●過失相殺: 3割
●掲 載 誌: セレクト22・191頁
●審級関係: 大阪高裁平成16年1月27日判決(データ登録あり)で維持、確定

 原告は、パートなどを中心に稼働していた主婦であり、株式取引経験はなく、本件各投資信託の取引の原資は、夫の退職金であった。証券会社担当者は、かような原告に、日経平均株価の2倍の投資成果を目指すものとして、5段階分類のうち最もリスクが高い5に分類されていた「パワーターゲット電機」等のパワーターゲット商品(投資信託)を勧誘して購入させ、同種商品の売買を繰り返した。その結果、これら投資信託につき、元本割れの損失が生じ、原告において損害賠償請求に及んだのが本件訴訟である。
 まず、判決は、適合性原則違反の主張については、原告に能動的な投資姿勢はなかったことや、投資資金は老後の生活資金であって大幅な減少は何としても避けようとする資金であったことを認めながら、これらは説明義務の程度に関して勘案されれば足るとして、本件勧誘行為は適合性原則違反とまでは言えないとした。他方、投資信託の勧誘における説明義務に関しては、判決は、「@投資信託の仕組みや組入れ商品、A投資信託の基準価額の形成メカニズム、B当該商品のリスクはもちろん、Cその商品により損失を回避し利益を取得するために必要な投資手法等を説明すべき義務がある」とし、これらに照らして、本件勧誘行為は説明義務違反にあたるとした。また、判決は、自己決定原則に依拠した証券会社側からの反論に対しては、担当者が投資リスクのある商品について原告の適合性に疑問があることを熟知していたことや、投資資金の性格等に照らし、リスクの高さやその回避等について十分な説明が求められ、定型的な情報を提供しただけでは説明義務を尽くしたとは言えないと判示し、さらに、「投資家の自己決定原則が妥当するのは投資家が自己決定できる場合に限られるものであるところ、証券会社が不十分な情報しか提供せず、その結果投資家が自己の責任で投資判断を決定できない状況で、証券会社が投資判断を提供し、その判断に投資家が従った結果取引による損失を被った場合にまで、投資家の自己責任原則が妥当することはできない」として、これを排斥した。(過失相殺3割)
 本件は、原告の属性と対象商品のリスクの高さからして、まさに適合性原則違反が認められるべき事案であったと思われ(同種の投資信託につき適合性原則違反を認めた判決として大阪地裁堺支部平成14年12月6日判決がある)、その意味ではすべてを説明義務の問題に押し込めようとした本判決の判断手法には疑問がある。しかし、説明義務の内容や程度に関する判示内容は実に正当であり、過失相殺が3割にとどめられた点と併せ、先例的価値のある判決と言えよう。