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解    説

■判  決: 大阪地裁堺支部平成14年12月6日判決

●商  品: 投資信託
●業  者: 岡三証券
●違法要素: 適合性原則違反、説明義務違反
●認容金額: 1533万0671円(3名分の合計額)
●過失相殺: 7割
●掲 載 誌: セレクト21・275頁
●審級関係: 確定

 事案は、平成8年7月を皮切りに、医師Aとその妻B、医師が経営する医療法人Cの3つの名義で、Bに対する勧誘により合計10数回にわたり、株価指数先物取引を活用するハイリスクハイリターンの投資信託「スーパーブル」の取引が行われ、償還期限の到来により取引全体を通算して合計約4600万円の実損を被ったというものであった。
 判決は、まず、適合性原則違反に関し、原告らの財産状態はかなり豊かであるとし、全ての取引を任せられて行っていたBも、専業主婦ではあるが、原告らの約3600万円の年収等について取引を行っており、有価証券取引につき相当程度の経験を有していた(株式取引もあった)、過去の損失から投資信託に元本割れの危険性があるとの認識も十分に有していたと認定した。しかし、その取引は比較的受動的な対応で行われており、経験年数の割には知識が浅いこと、安全志向の投資傾向を有し、担当社員もこれを認識していたことから、担当社員が、損失が日経平均株価の値動きの2倍となる点で危険性の高い本件投資信託を勧めた行為は、適合性原則に反しているとした
 次に判決は、説明義務に関し、上記投資傾向や、本件投資信託は原告らがそれまでに取引していた投資対象とは危険性において大きく異なるものであること等から、被告従業員は、「投資判断に影響を与えるような事項につき誤った情報を与えないことはもとより、その危険性、とりわけスーパーブルは株式先物取引も運用対象としており、その値動きは日経平均株価の値動きの2倍程度となる危険性があることにつき、十分に説明して理解させたうえで投資させる義務があった」とした。そして、Bは、担当社員の説明で、元本割れの危険性や、本件投資信託が日経平均に連動して値動きがあるとの認識は有していたにしても、担当社員は本件投資信託に償還期限がないとの誤った事実を告知しており(前提として、Bは償還期限の存否を重要な判断要素のひとつとしており、担当社員もこれを認識していたとされた)、先物取引を活用して運用することや日経平均株価の値動きの2倍程度となる危険性があることを説明していないとして、説明義務違反が認められた。
 なお、受益証券説明書の内容を確認した旨の確認書が3つの名義すべてにつき異なる時期に差し入れられていたことや、原告ら側にBの尋問を行えない事情があったことから、Bは何度も受益証券説明書の交付を受けたとの認定がなされ、加えて、これまでの投資経験や本件取引は多額の取引であってそれまで以上に慎重になるべきであったこと等が重視され、7割の過失相殺が行われた。
 過失相殺は高率であるが、上記のような属性の原告らとの関係で適合性原則違反が肯定された点、元本割れのリスクは十分認識されていた中で、リスクの程度や、償還期限の存否という当該顧客が重視していた要素の問題により説明義務違反が肯定された点で、意義のある判決である。