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解    説

■判  決: 東京高裁平成13年8月10日判決

●商  品: 外債
●業  者: 日興證券
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 457万5723円
●過失相殺: 9割
●掲 載 誌: セレクト18・102頁
●審級関係: 東京地裁平成12年12月19日判決の控訴審、確定

 香港に本店を有する投資銀行であるペレグリン社が発行する債券に関し、同社の倒産により償還を受けられなくなった損害について、信用リスクの説明義務違反を認めた東京地裁平成12年12月19日判決の控訴審判決である。
 本判決は、本件ペレグリン債は信用リスクがほぼ中級程度の商品であり(格付けはBBB+)、取引額も5000万円とかなり高額であったが、他方で、本件の投資家は投資経験が比較的豊富であり、過去に信用リスクのある商品の取引も多数回行っているし、一種類の証券を5000万円以上購入するという取引もあったと指摘し、適合性原則違反を否定した。しかし、本件の投資家の資金の運用目的は老後の資金の確保にあったこと、専ら証券会社従業員の説明に依存して投資するタイプの顧客であったこと、当時は比較的リスクの少ない商品で安定的に資産を運用したいとの希望を有していたこと、証券会社従業員はこれらの事情を了解していたことから、「本件ペレグリン債のような信用リスクを有する債券の購入を勧めるに当たっては、購入を決定する上で重要な判断要素となるようなリスクに関する情報をすべて開示した上で、その信用リスクについて十分に説明を行う義務がある」と判示し、一審判決と同様、説明義務違反を認めた。但し、顧客側にも相当の過失があるとして、9割の過失相殺が行われた。
 なお、ペレグリン社の清算手続が継続中であったことから、証券会社側からは、今後配当があり得るのでまだ損害は確定的に発生してないとの主張がなされたが、本判決は、ペレグリン債の優先順位をも考慮して、既に購入代金全額の損害が発生しており、仮に配当が支払われることになれば損益相殺を行えば足るとして、上記主張を排斥した。また、本判決は、債務不履行構成をとりつつ、弁護士費用を損害として認めている。
 勧誘の違法性を肯定しておきながら9割もの過失相殺を行うことは到底是認し得るものではないが、信用リスクに関する説明義務違反を正面から認めた初の高裁判決としての意義は大きいものと思われる。