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解    説

■判  決: 東京地裁平成12年12月19日判決

●商  品: 外債
●業  者: 日興證券
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 1634万4000円
●過失相殺: 7割
●掲 載 誌: セレクト17・729頁
●審級関係: 東京高裁平成13年8月10日判決で維持(但し認容額減少)、確定

 事案は、本件当時77歳の無職の男性が、被告証券会社担当者より勧誘を受けて、香港に本店を有する投資銀行であるペレグリン社が発行する債券を購入したが、その後ペレグリン社が倒産して、償還を受けられなくなったというものである。
 原告は、@売買契約についての錯誤、A証券取引法上の目論見書交付義務違反、B適合性原則違反及び説明義務違反による不法行為を主張したが、判決は、錯誤を否定し、目論見書交付義務違反については、交付義務違反は私法上の契約を無効ならしめるものではなく、また、証取法15条2項、16条の賠償責任に関しては、違反行為と損害との間に相当因果関係が認められないとして原告の主張を排斥した。
 しかし判決は、「証券会社が、本件ペレグリン債のような信用リスクを有する債券の購入を顧客に勧誘するに当たり、購入を決定する上で重要な判断資料となるようなリスクに関する情報を有している場合には、証券会社は、顧客に対し、その情報を開示した上で、信用リスクについての説明を行うべき義務があるというべきである」として信用リスクの説明義務を認めた。その上で判決は、担当社員は、ペレグリン債についての情報が記載されている社内資料を見て、ペレグリン債の信用リスクについて大きな不安を抱いていたにもかかわらず、信用リスクに関して原告に説明したのは、本件ペレグリン債には信用リスクがある、ペレグリン社はトリプルBに格付けされている会社であるという程度であって、右不安を抱いた根拠に関する情報を開示した上での説明をしなかったとし、証券会社の従業員が信用リスクについて大きな不安を抱く根拠となるような情報は、顧客にとっても、購入を決定する上で重要な判断資料となることは明らかであるとして、説明義務違反を認めた。また、原告が、リスクの高い商品をあまり好まない顧客であったこと(担当社員自身がそう認識していた)などから、説明義務が履行されていれば、原告は担当社員と同様にペレグリン債の信用リスクに大きな不安を抱き、購入に及ばなかった蓋然性が高いとして、説明義務違反と損害との間の相当因果関係も肯定した。
 信用リスクの説明義務を真正面から肯定した東京地裁合議部の判決として、その意義は大きいものと思われる。