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解    説

■判  決: 神戸地裁平成12年2月16日判決

●商  品: ワラント
●業  者: 新日本証券
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 1433万9857円
●過失相殺: 5割
●掲 載 誌: セレクト15・15頁
●審級関係: 控訴

 年診療報酬額が多いときで3億円程度の、20名の職員を抱える医院を経営する医師であり、昭和54年頃から他社での株式取引経験を有していた原告につき、説明義務違反が肯定された事案である。
 まず、判決は、訪問による1時間程度の勧誘、説明を受けながら、よく理解できないとして断っていた原告に対し、再度、診療時間中でゆっくり電話ができない状況下での電話で勧誘がなされて購入に至った旨を認定した。その上で判決は、以下のように判示して、説明義務違反を認めた。
 「一般投資家に対してワラント取引の勧誘をするに当たっては、少なくともワラントの価格の変動率は株式に比べて大きくなる傾向があり、ワラント取引では株式を売買するよりも少額の資金で株式を売買した場合と同等以上の利益を得ることが可能である反面、ワラントには行使期限の制限があって、それを経過すると無価値となり、価格が上昇せずに権利行使も売却もできないまま権利行使期間が徒過すると投資資金の全額を失うリスクがあることについては、当該投資者が的確に理解するに足りる説明をすることを要すると言わなければならない。」
 「証券外務員が一般投資家に対し、株式及びワラントの価格が下落傾向にある中で、実勢株価が権利行使価格を下回っているワラントの購入を勧誘する際には、前記のとおり,最低限説明すべき事項に加えて、その時点での当該権利行使価格と実勢価格との対比並びにそれまでの当該ワラントの価格及び株価の動向を具体的に説明した上で、当該ワラントの購入後,権利行使期間の満了に余裕がある時期までに株価が相当上昇して,当該ワラントの購入価格と権利行使価格を合算した額を上回るに至らない限り,当該ワラントが表章する新株引受権の行使により利益を得ることはできないし、権利行使期間の満了までに当該ワラントの価格も上昇に転じない場合には、当該ワラント自体を売却して利益を得ることもできないまま投資額の全額が損失となるというリスクがあることについて十分に注意喚起して,投資者が右の点について的確に理解し,当該ワラント取引による利益とリスクにつき自主的に判断した上でその取引を行うか否かを決定できるよう配慮すべき義務を負うというべきである。」
 「自主的な判断により取引を行うか否かを決定できるよう配慮すべき義務」を中核に、理解を前提とする高度の説明義務を導く構成は、東京高裁平成8年11月27日判決をはじめとする幾つかの高裁逆転勝訴判決によってほぼ確立しつつあると言える。本判決はこれを踏襲しつつ、投資家の表面上の属性に囚われることなく、詳細な説明義務を認めている。