大阪地裁 令和4年6月23日判決

商品
外国債券
業者
野村證券
違法要素
説明義務違反
認容金額
645万8927円
過失相殺
5割
掲載誌
セレクト60掲載予定
審級関係
 

原告は亡き夫と結婚するまで銀行の窓口で働き、結婚後は専業主婦として生活してきた者であるが、結婚後、被告において取引口座を開設して原告名義で証券取引を開始した。しかし、投資経験の豊かな夫を有価証券取引代理人として選任していたので、自ら主体的に判断して取引をしたことはなかった。

原告は証券会社での取引が預金等と異なり元本が保証されないものであること、外貨建てまたは外国発行の商品を買えば、為替相場によっても損益が変動し、日本円及び国内発行のものよりも損益の幅が大きくなることは理解していた。

その後、夫が亡くなり、夫が原告名義で購入してくれていた証券に加えて、夫名義の証券類も相続し、すべて原告が有価証券取引代理人なしに自ら取引するようになった。

結局、原告は、トルコリラ建てのゼロクーポン債(額面の6割程度で発行されて、満期時に10割で償還される代わりに利息は支払われないというもの)を3商品、合計約3500万円と、ブラジルレアル建ての債券に投資する投資信託に約2000万円、合計5500万円を投資したところ、トルコリラとブラジルレアルの下落により、約半分程度までに評価額が下がってしまったという事件につき、投資経験や投資知識の極めて乏しい原告に対する説明義務違反などを理由に不法行為に基づく損害賠償請求を求めたものである。なお、訪問時に決めた証券が品切れであったことから、再度、電話で別の商品の説明が行われたことから、購入直前の説明と勧誘の内容につき、電話録音が残っていたことで、説明不足、理解不足の実態が明確になったものである。

判決は、トルコリラ建て債券につき、担当者には、原告の取引経験、知識等を前提にして、トルコ共和国及びトルコリラの概況を踏まえた満期償還時及び中途売却時の為替リスクの程度を原告が十分に理解して判断できるだけの説明を行う義務があったとし、原告が亡夫の資産を承継して以降、45%を下回ることはなかった円への投資比率を22.8%にまで下げ、トルコリラへの投資比率を44.7%にまで上げるものであった、などということを指摘した上で、原告の証券取引に関する知識や理解を前提にすれば、同一の新興国通貨に本件口座の半分以上を投資すること及びそのリスクの大きさについては説明すべきであった、などとした上で、訪問時に一応一通りの説明はしたと認められるとしつつも、電話での説明内容も踏まえて検討すると、原告が為替リスクの程度を十分に理解して判断できるだけの説明になっていたとは言いがたく、逆に為替リスクを低く見積もらせるような説明だったと言わざるをえない、などとして、説明義務違反を認めて、不法行為を認定したものである。

外国債券の集中投資について、顧客の知識、経験と合わせた評価によって、説明義務違反の不法行為を認めた点において、判例としての意義がある。

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