津地裁伊勢支部 令和元年11月28日判決

商品
NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油ダブル・ブルETN
業者
岡三証券株式会社
違法要素
説明義務違反
認容金額
177万4306円
過失相殺
7割
掲載誌
セレクト57
審級関係
 

事案は、レバレッジ型指標を用いたETNを購入した顧客が、原指標とETNの価格との間に乖離が生じたとして損害賠償を請求したというものである。

NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油ダブル・ブルETN(以下「原油ブル」という。)は、日経・東商取原油レバレッジ指数を連動対象とする債券(ETN)であるところ、同指数は、変動率が日経・東商取原油指数(以下「原指標」という。)の前日比変動率の2倍となるように計算されたもの(レバレッジ型指標)であった。

(注)ETN(イー・ティー・エヌ)とは「Exchange Traded Fund」の略で、「上場投資証券」又は「指標連動証券」と呼ばれる上場商品であり、価格が株価指数や商品価格等の特定の指標に連動する金融商品のことである。

レバレッジ型指標は、変動率が原指標の日々の変動率の2倍となるよう算出されているため、前営業日と比較すると変動率は2倍になるが、2営業日以上離れた日と比較すると複利効果により原指標の変動率の2倍超又は未満となるという特性があり、特に原指標が上昇・下落を相互に繰り返す場合、やはり複利効果によりレバレッジ指標は逓減していく特性がある(以下「本件複利効果」という。)。

(注)本件福利効果の詳しい内容については、㈱東京証券取引所が作成した以下の各ウェブサイトを参照のこと。

原告は、岡三証券の担当者から、「原油ブルは対象指標である原油先物価格の上がった分の2倍動く」という説明を受けていたが、本件複利効果については全く説明を受けていなかった。原告が原油ブルを購入した直後に原指標は急落し,これに合わせて原油ブルも下落したが、約3年後には原指標が上昇・下落を繰り返しながら相当回復した一方で、原油ブルの価格は原告の意に反して本件複利効果により逓減していき、大きな乖離が生じるに至った。

そこで原告は、本件複利効果について説明義務があったとして損害賠償請求を求めたものである。

判決は、本件複利効果について、「原指数が上昇と下落を繰り返す局面において、原指数の動きと指標の動きが乖離し、原指数が元の水準に戻ったとしても指標は戻らない(本件複利効果)ということまでが当然に推測できるとはいえず、また、原告が本件複利効果まで理解していることを窺わせる事情は存しない。投資者が、投資商品に関する投資期間や売却のタイミング等を検討するについては、原指数と指標の関係を十分理解することが必要であるといえ、特に本件複利効果については、投資期間や売却の時期を決めるについて重要な要素である」とした上で、原油ブルの購入に当たって本件複利効果について説明義務があったのに担当者はこれを行わなかった点に説明義務違反があるとした。

本判決における過失相殺は7割であった。

原油ブルのようなレバレッジ型指標は、変動率が原指標の日々の変動率の2倍となるよう算出されているため、原指標が上昇・下落を繰り返しても常にレバレッジ型指標は原指標の変動に比して常に2倍の動きをすると誤解しがちだが、実際は本件複利効果により原指標が上昇・下落を相互に繰り返す場合、複利効果によりレバレッジ指標は逓減するという特性があり、長期保有すると損失が生ずる可能性が高くなる商品である。

本件複利効果を含め、レバレッジ型指標は複雑な商品特性があり理解が困難である上、投資期間や売却のタイミング等を判断する上で極めて重要な要素であることから、この点について説明義務違反を認めた点で意義のある判決である。

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