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解 説 |
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■判 決: 東京地裁平成29年11月17日判決
●商 品: 株式(信用取引)
●業 者: SMBCフレンド証券
●違法要素: 過当取引
●認容金額: 884万5857円
●過失相殺: なし
●掲 載 誌: セレクト54・31
●審級関係:
事案は、株式の現物取引及び信用取引並びに投資信託取引等を行った顧客が、一連の取引において適合性原則違反や説明義務違反、過当取引等の違法行為があったとして損害賠償請求を行ったものであった。
判決の認定によれば、顧客(取引当時70代の女性)は、有名国立大学を卒業して有名会社に勤務した経験があり、出版業を営む会社の代表者を務めながら、本件取引以前にも他社で3年未満程度の株式や投資信託等の取引経験があったとされている。但し、顧客は、本件の一連の取引の途中で、上記の会社の代表者を退任し、以後は自宅で執筆活動等の仕事をしていた。
判決は、本件取引を時期や取引対象毎に検討し、株式の現物取引や投資信託等については、顧客の取引経験や取引の理解等を理由として取引の違法性を否定したが、一連の取引の終盤に開始された信用取引については、違法性を肯定した。
すなわち、まず判決は、顧客に信用取引の適合性がなかったとはいえないとしたものの、「原告のこれまでの投資経験との差に鑑み、株式の信用取引のリスクの高さや投資判断の困難さについて、具体的に理解できるように、十分な時間をかけ、また適切な資料を示すなどして説明すべきである」とした。そして判決は、「証券会社は顧客に取引を勧誘するに当たり説明義務を負っているのであるから、その説明義務を果たしたことを明確にするためにも、説明を実施した旨の記録を残すことが自然である」とし、にもかかわらずそのような客観的証拠が提出されていないことから、説明に関する担当者らの証言は信用できないとした。
続いて判決は、「(担当者は)信用取引の勧誘時に、原告に対し、信用取引のリスクについて十分な説明をしていないばかりでなく、ペアトレード方式で信用取引を行えば、ほぼ確実に利益を上げることができるかのような説明をし、被告からの取引内容確認の電話に対し、「はい。」とだけ返事をし、よく分からないとは言わないように指示した上、ペアトレードの売り買いは○○(注・担当者)が指示するところに従ってくれればよいとも述べている」との指摘を行った上で、上記説明にもかかわらず、取引開始後まもなく単体での買い建てをさせて損失を出していることや、顧客が空売りの意味や取引残高報告書の評価損(含み損)の意味も理解できていなかったこと、担当者らは顧客が信用取引を理解していないことに気づきながら、十分な説明をせず、それどころか合理性のない説明や事実に反する説明をして単体銘柄での信用取引を継続させるよう仕向けていたこと、顧客が信用取引をやめたい旨述べて徐々に取引を減らしていくことになった後も、担当者らは利益を出すからといって信用取引を継続させていたことを認定した(電話録音のデータが重要な証拠となったようである)。
以上により判決は、担当者らは、悪意で顧客の口座を支配して、信用取引を主導し、過度な取引を行わせたものであって、その目的は手数料を得ることにあったと推認することができるとして、信用取引全体が違法であったとし、過失相殺を行うことなく信用取引に関する顧客の請求を認容した。