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解 説 |
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■判 決: 横浜地裁川崎支部平成26年3月25日判決
●商 品: 仕組債(為替連動債、EB)
●業 者: その他(三菱UFJメリルリンチPB証券)
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 1049万2144円
●過失相殺: 8割
●掲 載 誌: セレクト47・251頁
●審級関係: 控訴審で和解
事案は、結婚後しばらくは専業主婦であったが本件取引時は不動産売買及び賃貸借管理を目的とする有限会社の代表者に就任していた顧客が、養母から遺産を相続したことを契機に、三菱東京UFJ銀行の預金の運用につき同行に相談を行ったところ、被告証券会社を紹介されて取引を開始し、為替系の仕組債であるパワーデュアル債や、EBの勧誘を受けて購入した結果、損失を被ったというものであった。
判決は、まずパワーデュアル債につき、信用リスク、為替リスク、流動性リスク、価格変動リスクの存在を指摘し、「それらのリスクに見合うリターンが得られるのか、リスクを回避する手段があるのかについて、適切な説明を受けなければ、直ちには理解することが困難な複雑な仕組みの商品である」と判示し、EBについても、信用リスク、株式償還リスク、流動性リスクの存在を指摘し、「それらのリスクに見合うリターンが得られるのか、リスクを回避する手段があるのかについて、適切な説明を受けなければ、直ちには理解することが困難な複雑な仕組みの商品である」と判示した。他方で、判決は、顧客の属性等につき、顧客は投資経験が少なく為替や株式についての理解や知識が豊富とは言えなかったとし、投資意向として、元本変動の少ない商品を希望しており、安全志向ではあったとしつつ、商品によっては大幅な元本毀損の可能性のあるものであっても購入しないことはなく、どの程度のリスク以上は許容できないといった具体的な考えがあったものでもなかったとし、本件仕組債の購入金額は顧客の資産の約15%で、その原資は相続財産であり余裕資金であって、顧客は他に1000万〜1500万円の年収を有し、ある程度リスクを伴う取引を行う資力を有していたとし、顧客は適切な説明があれば本件仕組債のリスクとリターンを適切に判断して購入の可否を決するだけの能力を有していたとして、これらの点を根拠に、適合性原則違反を否定した。
次に、判決は、説明義務の内容や程度につき、「信義則上、顧客の知識、投資経験及び理解力に応じ、当該顧客が当該金融商品取引の内容、仕組み及び危険性について、具体的に理解することができるよう、説明すべき義務がある」とし、さらに「証券会社による説明は、顧客の自己責任の前提となるものであるから、顧客において的確な認識を形成できるような内容である必要がある。証券会社による説明は、原則として顧客本人に対し直接行うことを要すると認められ、例外的に、顧客本人が直接説明を聞くことができない場合や顧客本人が第三者に対する説明を依頼した場合には、証券会社は、第三者から説明を聞いた顧客本人が、証券会社による説明を正しく理解しているかを適宜の方法により確認することが必要になる。」と判示した。そして判決は、本件仕組債が複雑でリスクとリターンの関係が分かりにくく、リスクが高い商品であることや、顧客に投資に関する経験や知識がほとんどなかったことからすれば、前記の各リスクについて、顧客が的確な認識を形成するような内容で、かつ、顧客がそれを具体的に理解できる程度に説明すべき義務があったとし、にもかかわらず、パワーデュアル債につき具体的な説明が行われた際には顧客本人は同席しておらず(夫に対して説明が行われたと認定されている)、その後の面談時にも、顧客本人が夫からどのような説明を聞き、どの程度理解したかについての確認は行われておらず、パワーデュアル債が安全な商品であると誤信させるような説明が行われていることなどから、パワーデュアル債のリスクにつき的確な認識を形成するような説明や顧客が具体的に理解できる程度の説明は行われてないとし、説明義務違反を認めた。また、判決は、EBについても、具体的な説明が行われた際には顧客本人は同席しておらず、夫から断片的な説明を受けただけであり、リスクについては何ら聞いてないこと、顧客本人が夫からの説明でどの程度理解したかについての確認は行われておらず、担当社員は 顧客に資料を送付して電話で説明したのみで、その説明時に資料を参照させて逐一説明することもなかったこと、電話での説明は夫に対する説明も含まれており、顧客に対する説明としてどの程度の時間を割いたのかも不明であること、顧客に対しては対象銘柄の株価は今は900円程度だが実力は1000円以上あると思うとのノックイン事由の発生可能性が低いと誤信させるような説明が行われていたことなどから、的確な認識を形成するような説明や顧客が具体的に理解できる程度の説明は行われてないとし、説明義務違反を認めた。