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解    説

■判  決: 神戸地裁明石支部平成25年8月16日判決

●商  品: 仕組債(株価連動債)
●業  者: SMBCフレンド証券
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 225万1565円
●過失相殺: 5割
●掲 載 誌: セレクト46・156頁
●審級関係: 控訴審で和解


 事案は、主婦である顧客が、勧誘を受けて平成19年に購入したユーロ米ドル建期限前償還条項付日経平均株価連動デジタルクーポン債(期限10年、ノックイン条件、期限前償還条件付き、クーポンは株価により8.5%又は0.1%に変動)によって損害を被ったというものであった。
 判決は、まず、本件仕組債の商品特性を検討し、信用リスク、為替変動リスク、流動性リスク、価格変動リスク、利率変動リスクの存在を指摘した。他方で、判決は、顧客は高校卒業後、数年程度しか社会経験がない当時70歳の女性であったとしつつ、その収入状況や資産状況を子細に検討した上で、30年以上の株式取引のキャリアがありその他の金融商品の取引も行っていたこと、被告証券会社に提出した投資意向等の確認票に、主たる投資目的が値上がり益追求であることや、短期運用を望んでいるが意のままにならない旨を記載していたこと、事後に他社で同種債券を2回購入していたことなどを指摘して、適合性原則違反については、これを否定した。
 しかし、判決は、説明義務については、証券会社担当社員がリーフレットを使用して約1時間かけて説明した旨の被告証券会社の主張を裏付ける客観的証拠は全く提出されていないこと、担当社員は電話で約1時間、訪問時にも約1時間説明したと証言しているが、同日にさして時間もおかず同一の内容を丁寧に重複して説明することは通常考え難く話ができすぎている上に、「仮にそれだけ丁寧に説明したのであれば、当然、原告からも本件仕組債の内容についていろいろ質問がされてしかるべきであるにもかかわらず、○○(注・担当社員)は、それに関する証言をしていない」ことを指摘し、さらにその後の顧客の被告証券会社への電話内容(顧客がキャンセルを申し入れようとして電話した際の録音記録が提出されていたようで、判決の認定によれば、顧客から「説明聞いてもわからないからね」との発言があり、証券会社側からは「大丈夫ですよ」との発言がなされていたようである)を考慮すれば、担当社員が丁寧に本件仕組債の内容を説明したとは認め難いと判示し、さらに、担当社員の顧客との接触状況の記録には、目論見書等を使用して説明を行った旨の虚偽報告が記載されていたことをも指摘して、担当社員の証言や被告証券会社の主張は採用できないとし、説明義務違反を認めた(過失相殺5割)。
 適合性原則違反に関する判断には問題があるものの、証券会社側が主張する説明内容の信用性を常識的な判断によって否定した点において、参考となる判決であると言える。