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解 説 |
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■判 決: 東京地裁平成25年7月3日判決
●商 品: 仕組債(株価連動債)
●業 者: 日興コーディアル証券(判決時の商号・SMBC日興証券)
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 1152万7900円
●過失相殺: 7割
●掲 載 誌: セレクト46・47頁
●審級関係: 控訴審で和解
事案は、精神科医である女性顧客が、勧誘を受けて平成20年に購入した2つの仕組債によって損害を被ったというものであった。これらの仕組債は、いずれも期限は約1年(早期償還条件付き)で、3銘柄の株式(仕組債毎に対象銘柄は異なっていた)を対象とし、3銘柄中1銘柄でも予め定められた株価を下回ると当該銘柄の株式で現物償還されるというもので、クーポンは株価水準によって変動する(1回目の仕組債は27%又は0.1%、2回目の仕組債は21%又は0.1%)ものとされていた。
判決は、まず、これらの仕組債につき、金利の額、償還時期、償還物(現金か株式か)が3銘柄の株式の値動きによって変動し、高い利率で金利を受け取れる場合があるが下落した株式による現物償還により当初の投資元本を大きく割り込むことがある点、流通市場は確立されていないため満期前に売却できない場合があり、売却できても大幅な損失を被る可能性がある点、さらには信用リスクや、早期償還があるとそれ以降の利息を受け取れなくなる点をリスクとして指摘し、「ハイリスク・ハイリターンの金融商品である」と結論付けた。
次に、判決は、原告が精神科医で医療法人の経営者であって、収入も多く資産家であることを指摘し、株式への積極的な投資経験があり一定程度のリスクをとっても積極的に利益を求めることを投資目的としていることがうかがえるとして、これらを主な根拠として、適合性原則違反については、これを否定した。
しかし、判決は、説明義務については、「顧客が不測の損害を被ることのないよう、その商品概要とリスクについて説明すべき義務を負う」とした上で、株式償還される場合の償還株式数の計算方法につき、パンフレット等の記載は一覧性に欠ける上に商品毎に用語が異なり、顧客にとって一見して理解しやすいものとはいえないこと、顧客は仕組債購入後の証券会社担当社員との電話でのやりとりにおいて、株式償還される場合は償還時の株価で行われるのではないかと発言し、証券会社担当社員は誤ってこれに同調する発言をしていたことを指摘し、これらから、顧客は、勧誘時に説明は受けたものの、書面のわかりにくさや証券会社担当社員の理解力・説明力不足、顧客の理解力不足があいまって、株式償還される場合の株式数の計算方法について正しい理解を得るに至ったとは言い難いとし、株式償還される場合のリスクに関する説明は顧客との関係において不十分であったとして、説明義務違反を認めた(過失相殺7割)
適合性原則違反に関する判断には問題があるものの、株式償還される場合の株式数の計算方法という、具体的な事柄についてのわかりにくさや説明の不十分さに起因する顧客の誤解が正しく取り上げられている点において、参考となる判決であると言える。