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解 説 |
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■判 決: 宇都宮地裁大田原支部平成25年1月30日判決
●商 品: 株式(信用取引)
●業 者: その他(宇都宮証券)
●違法要素: 適合性原則違反
●認容金額: 605万0743円
●過失相殺: 7割
●掲 載 誌: セレクト44・56頁
●審級関係: 確定
事案は、女性顧客が平成18年4月から平成21年5月までの約3年間の信用取引によって約1800万円の損失を被ったというものであった。判決によれば、顧客は長年公務員として勤務した後に小規模な個人営業の域を出ない会社の代表者となっていたが、信用取引開始時の顧客の預貯金は約575万円、年間所得は220万円から280万円程度であったとされている。また、顧客は昭和58年から被告証券会社で取引を開始し、信用取引を行ったこともあったが、これは1年6ヶ月の間に24回の売買とが行われたというもので、1回あたりの買付額も最大270万円で、銘柄選定等は被告証券会社担当社員の提案に沿って行われていたとされており、他に2社の証券会社で取引があったものの、信用取引は行っていなかったとされている。
判決は、まず、顧客の過去の信用取引経験については、被告証券会社担当社員の提案によって行われていたことや、金額もさほど大きなものではなく、最終の取引から本件信用取引まで10年以上が経過しており、本件信用取引開始時点では、顧客は信用取引の基本的な用語すら知らない状態であったことから、顧客が本件信用取引開始時点で自らの判断により信用取引を行うことができる程度の知識を有していたとは認められないとした。また、判決は、顧客の従前の取引や他社取引等から、顧客は積極的に信用取引を行う意向を有していたとは認められず、積極的な勧誘により本件信用取引の開始を決意したと認定した。
次に判決は、信用取引はリスクが大きく顧客に求められる知識、能力の水準もこれに応じて高いものになるとし、さらに、「回転率が高い取引においては、個別具体的場面における投資判断の考慮要素が複雑化し、より高度の知識、能力を有する者でなければ適切な判断をすることが困難になる傾向がある」とした上で、本件の平成19年における回転率13.06回は相当に高い数字であることを指摘し、本件信用取引には、利益を生じる銘柄は短期で決済する一方、短期間で利益を得られなかった銘柄については比較的長期間保有する傾向があり、複数の買建銘柄を同時に保有している時期も多く、そのような状況下で信用取引を継続することにより、これらを通算した損益の予測が困難になっていたとの指摘を行って、「本件信用取引は、相当程度の株式取引に関する知識、経験がなければ、適切に行うことが困難な性質のものであった」とした。
そして判決は、以上を総合すれば、本件信用取引は、顧客の取引に関する知識、経験及び資力等に照らして、過大な危険を生じさせるリスクを伴うものであったとし、顧客は信用取引を行う意向を有していなかったのに被告証券会社担当社員の勧誘により本件信用取引を開始し、同人の提案に沿って本件信用取引を行っていったのであるから、同人のこれらの行為は顧客の意向と実情に反して明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘したものとして、不法行為法上違法なものであったとした(過失相殺7割)。