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解    説

■判  決: 神戸地裁姫路支部平成24年2月16日判決

●商  品: 投資信託
●業  者: その他・・・三井住友銀行
●違法要素: その他(意思無能力による無効)
●認容金額: 294万1967円
●過失相殺: −
●掲 載 誌: セレクト42・161頁
●審級関係: 控訴 


 事案は、平成19年に被告銀行から投資信託(三井住友グローバル債券オープン、グローバルREITオープン)をそれぞれ400万円(合計800万円)で購入する手続を行った顧客が、これらを売却したことで生じた損失について、意思無能力による取引の無効、錯誤による取引の無効、適合性原則違反及び説明義務違反等による不法行為等を主張して、訴訟を提起したというものであった。
 判決は、まず、顧客が重大な疾病により入退院を繰り返していたことや、その病状、顧客とその妻には投資経験がなかったこと、顧客が疾病のため勤務先を退職して800万円の退職金を得た後に、妻が被告銀行に電話をかけたことをきっかけに本件勧誘が行われたこと、顧客の自宅での勧誘や説明の際に主に対応していたのは妻であり、顧客は時折口を挟む程度であったこと、さらには上記各投資信託の商品特性などを認定した。そして、判決は、意思能力があるかどうかの判断は、どのような取引を行うかによって違いうるとした上で、顧客がトラック運転手として投資信託とは無縁の人生を過ごしてきたこと、平成18年頃からは意識障害・見当識障害も見られはじめ、退院時の事情に照らしてこれらが治癒したと認めるに足りる証拠はなく、退院後も顧客は妻の顔が分かる程度であって、本件契約が成立した後すぐに再入院の余儀なきに至ったこと、本件勧誘時に説明を受けたのは主に妻であって、顧客が上記各投資信託の特長や投資対象等を理解していたことを認めるに足りる証拠はなく、顧客はこれらをまったく理解することなく申込書に署名押印したことを認定し(妻についても、上記各投資信託の説明に用いられたパンフレットの主要部分を理解していたとは認められないと判示されている)、契約締結時に顧客に意思能力があったとは到底解すことができないとして、現存利益についての不当利得返還請求を認めた。(但し、判決は、被告銀行は、顧客に意思能力が欠けていたことを知らず、知ることもできなかったなどとして、不法行為の成立を否定し、錯誤の主張も動機の表示がなかったとして否定した。)
 なお、判決は、顧客が本件訴訟提起にあたって弁護士への委任を行ったこととの関係については、意思能力があるかどうかの判断は、どのような意思表示を行うかによって違いうるとした上で、弁護士への訴訟行為の委任と顧客にまったく基礎知識がなかった投資信託取引を同列に論じることはできないと判示している。