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解    説

■判  決: 名古屋地裁平成22年2月5日判決

●商  品: 株式(信用取引)
●業  者: 東海東京証券
●違法要素: 過当取引
●認容金額: 685万8584円
●過失相殺: 6割
●掲 載 誌: セレクト36・28頁
●審級関係: 名古屋高裁平成22年8月20日判決で維持。


  事案は、上場企業に勤務する会社員が、平成18年1月から6月まで、勧誘によって株式信用取引を行い損害を被ったというもので、原告は適合性原則違反、過当取引、説明義務違反等を主張したが、過当取引の違法(不法行為)だけが認められた(過失相殺6割)。なお、判決の認定によれば、本件信用取引においては39銘柄の取引が行われたが、そのうち21銘柄は新興市場に上場している銘柄であった。
 まず、判決は、過当取引の違法性について、「証券会社が、顧客の取引口座に対して支配を及ぼして、顧客の信頼を濫用し、顧客の利益を犠牲にして手数料稼ぎ等の自己の利益を図るために、顧客の資産状況、投資目的、投資傾向、投資知識、経験等に照らして過当な頻度、数量の取引を勧誘することは、顧客に対する誠実義務に違反する背信的行為として、私法上も違法になると評価すべきである」と判示した。そして判決は、本件信用取引においては初期段階の2ヶ月10日という短期間に合計180回もの多数回の新規建玉が行われたことや、保有日数の短さ、原告の年収や資産と比較しての取引金額の大きさなどの客観的事実を指摘し、さらに、本件信用取引開始前の原告の現物株式の取引経験は豊富とは言えず、取引金額も大きいものではなく、信用取引経験は全くなかったこと、原告はある程度のリスクは覚悟した上で利益を得られる取引をしたいという投資意向を有していたものの、あくまで一般投資家であって、高度の投機目的を有する者ではなかったこと、本件信用取引においては原告が自主的に注文したことは一度もなく、すべて勧誘による取引であったことから、担当社員の主導性は明らかであること、本件信用取引の手数料合計額は1471万3567円と多額であり損失全体額1564万6461円の約94%を占めることを指摘して、これらの事実によって、過当取引の違法性を認めた。