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解    説

■判  決: 名古屋地裁平成17年8月10日判決

●商  品: 仕組債(株価連動債・EB)
●業  者: 国際証券(現・三菱証券)
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 177万8439円
●過失相殺: 6割
●掲 載 誌: セレクト26・181頁
●審級関係: 控訴審で和解成立

 大阪地裁以外でのEBに関する初の勝訴判決である。原告は取引当時69歳の女性で、本件取引以前に国債、外債等の債券を購入したことはあったが、株式取引の経験はなかった。本件訴訟は、かような原告が、平成12年2月から3月にかけて、それぞれ京セラ株、NTTドコモ株、ソニー株を転換対象株式とする3つのEBを勧誘により購入し、損失を被ったため、適合性原則違反、説明義務違反等を理由に損害賠償請求を行ったというものである。
 判決は、まず、EBの特性につき、株式償還のリスクに関しては「株式プットオプションの売買と同様の経済的実体が存在すること」や、「株式のプットオプションの売主と同様の立場に立つリスクを負う」ことを肯定した。
 次に、適合性原則の問題に関しては、判決は、前記の原告の取引経験や安全確実な商品を望む投資意向等から、原告へのEBの勧誘は適合性に疑問の余地がないわけではないとしつつ、結論としては適合性原則違反を否定した。
 他方で、判決は、上記のような原告の属性等に加えて、EBは仕組みが分かりにくく正確に理解することが困難で、単に高率の利率が約束された債券であるとの誤解を招きやすい商品であること、さらには、広告やリーフレットでは一定の高利率が保障されていることや1年債・6か月債といった債券であることが強調されている反面、株式償還の可能性はポイントを落とした小さい字で記載されており、注意して全文を読まないと気付きにくい体裁となっていることを指摘した上で、「上記のような属性を持つ原告に対しては、株価下落時における株式償還の可能性について抽象的に説明するだけでは足りず、償還日に取得する株式数、それによりどの程度の評価損を受ける可能性があるかについて、具体的な数字を挙げて説明して理解をさせる必要がある」とした。そして、判決は、一応の説明がなされていたことを認定しつつ、株式償還によるリスクについては、リーフレットや広告に記載されている以上の説明はなされていないとして、説明義務違反を認めた。なお、判決は、目論見書の交付と確認書の徴求については、原告が確認書に署名捺印していることをもって、原告が目論見書に目を通してEBについて十分に理解していたと断定することはできないと判示している。