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解    説

■判  決: 東京地裁平成17年7月22日判決

●商  品: オプション(日経平均株価指数オプション取引)
●業  者: 泉証券(判決時の商号・SMBCフレンド証券)
●違法要素: 適合性原則違反、説明義務違反
●認容金額: 1750万5625円
●過失相殺: 5割
●掲 載 誌: セレクト26・223頁
●審級関係: 控訴審で和解成立。


 事案は、元会社員であり、会社退職後は公務員として勤務していた原告が、被告と取引していた父親が株を残して死亡したことを契機に被告で取引を開始し、勧誘による上場投資信託(ETF)や株式の取引を経て、勧誘によって日経平均株価指数オプション取引を行い、平成14年9月から平成15年12月にかけての計722回ものオプション取引により、3200万円近い損失(うち約2500万円は消費税込みの手数料負担)を被ったというものであった。
 判決は、オプション取引の特徴を検討した上で、「オプション取引は、金融工学等に基づいて構築された極めて複雑難解な仕組みとなっており、その仕組みを十分に理解することなく、あるいは、関連情報の収集分析能力を備えていない者が取引を行う場合には、もっぱら直感的な相場見通しを手掛かりとして、リスクの限定や回避を講じることなく、損失の可能性に対し無防備な取引を行い、その結果、予期しない多額の取引差損、手数料損等の損失を受ける可能性が少なくないものと認められる」として、他の投機取引にも増して適合性について慎重な検討が必要であると判示した。そして判決は、原告には株式取引等の投機取引について理解するための知識、経験、能力等はあったが、オプション取引について的確に理解し、的確な取引行為を行い得るほどの専門的な知識、経験等を有していたとは認められないとし、また、公務員として勤務していた原告には調査検討や独自の情報の収集分析を行い得る状況にもなかったとした。次いで判決は、説明義務に関し、「オプション取引の仕組み等を分かりやすく的確に説明するとともに、取引に伴う損失の危険性、手数料の負担等の損失に関する要因についても十分に説明する義務がある」とした上で、担当社員の説明はオプション取引のアウトラインに関する通り一遍の説明に止まるものであって、原告が上記の点について的確に認識し得たとは認められないとした(併せて、判決は、原告には投資取引について少なくとも平均水準の理解力があったとしつつ、それでも本件における説明程度では、複雑難解なオプション取引を理解して自己の判断で取引をこなすことは困難であるとも判示している)。以上から、判決は、適合性原則違反と説明義務違反による不法行為を肯定した(過失相殺5割)。
 オプション取引一般に関する判示内容は、従前の裁判例の流れに沿うものとして正当であるが、客観的数値から見て意図的な手数料稼ぎが強く疑われる事案であるのに、具体的な取引内容の問題に全く踏み込むこともなく、しかも5割もの過失相殺を行っている点では、疑問の残る判決である。