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解    説

■判  決: 東京地裁平成16年9月27日判決

●商  品: 株式
●業  者: 日興証券(現・日興コーディアル証券)
●違法要素: 無断売買
●認容金額: 1283万8293円(他に株券引渡請求が認容されている)
●過失相殺: −
●掲 載 誌: セレクト24・90頁
●審級関係: 確定

 事案は、原告たる投資家が、疾病で意識不明となって事理弁識能力を欠くに至った後に、証券会社担当社員が原告の妻名義の口座で無断売買を行ったとして、そのうち無断売却については原告の成年後見人においてこれを追認し、その売却代金による株式買付については原告に効果が帰属しないものとして、株式売却代金の支払及び保護預かりとなっていた株券の引渡を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として弁護士費用相当額の支払を求めたというものであった。
 本件では、まず、妻名義の口座の取引が誰の取引であるかが争われたが、判決は、口座開設手続及び実際の注文は原告が行っていたこと、資金は全て原告の預金口座から出ていたこと、妻に取引歴がないこと、等から、これを原告の取引と認定し、妻名義の口座は借名口座であると判示した。次に、妻による代理もしくは表見代理等が成立するかにつき、判決は、担当社員が妻から注文を受けたと述べている時期には、妻は病院で生死をさまよう原告の介護に終日多忙であったこと、妻にはそれまで投資経験はなかったこと等から、妻による注文があったと認めることはできないとして、これらの取引の効果は原告に帰属しないとした。
 その上で判決は、無断売買についても追認は可能であり、追認するか否か、どの行為を追認するかは追認権者の自由な選択に委ねられるとして、原告(成年後見人)による売却行為のみの追認を肯定した。また、判決は、無断売買も不法行為に該当するとして、弁護士費用100万円についての損害賠償請求を認容した