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解    説

■判  決: 名古屋地裁豊橋支部平成15年11月25日判決

●商  品: 投資信託
●業  者: 勧角証券(現・みずほインベスターズ証券)
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 82万9191円
●過失相殺: 8割
●掲 載 誌: セレクト23・277頁
●審級関係: 控訴

 事案は、専業主婦であった原告が、被告証券会社と取引を行っていた夫が亡くなったのを契機に、平成8年以降、相続した財産を原資として、勧誘による外国債券や投資信託、現物株の取引を行うようになったところ、平成10年に購入したスーパー・ペガサス・オープン、ガートモア・ヨーロッパ・オープンの2つの投資信託で損失が発生したというもので、原告は、適合性原則違反、説明義務違反等を根拠として損害賠償請求を行った。なお、スーパー・ペガサス・オープンは、世界主要国の公社債を主な投資対象とし、株式組入率を30%以内におさえるというもので、ガートモア・ヨーロッパ・オープンは、主として欧州諸国の株式を投資対象とし、株式組入率については制限がないというものであった。
 判決は、まず、原告の従前の取引経験や損失発生の経験から、各投資信託の勧誘は適合性原則違反とまでは言えないとした。他方、判決は、いずれの投資信託についても、パンフレットを交付して、投資対象、為替や株価の変動による影響を受けること、元本保証がないことにつき一応説明があったとしつつ(但し、株式組入率の説明はなかったと認定された)、原告の過去の損失の経験は約20万円に過ぎず、他の商品では利益が出ていたことなどから、原告は担当者を信頼しており、投資信託についても相当確実に利益があがるものと考えていたとした。そして判決は、このことに加えて、原告はもっぱら勧誘に依拠して取引を行っていたこと、投資信託は投資対象、運用方法等によって危険性が大きく異なることなどを総合考慮すると、「単にパンフレットを交付して一般的な説明をするだけでなく、受益証券説明書も交付した上で、さらに、本件商品に元本欠損が生じるおそれを示す指標やその事由、以前に購入した商品との相違点を具体的に説明すべきであった」と判示し、本件ではかような説明はなかったとして、説明義務違反を肯定した(過失相殺8割)。なお、受益証券説明書が交付されたか否かは争いがあったが、判決は、取引確認書などの説明書交付を証する書類が見当たらず、担当者らの証言のみで交付を認めることはできないとしている。
 過失相殺は高率であるが、一般的な説明だけではなく、当該投資信託の内容に踏み込んだ具体的な説明が必要とされている点は、近時の説明義務の流れに沿いつつ、さらにこれを深化させたものと評価することができる。