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解 説 |
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■判 決: 東京高裁平成15年4月22日判決
●商 品: オプション
●業 者: 野村證券
●違法要素: 適合性原則違反
●認容金額: 1億2546万1981円
●過失相殺: 5割
●掲 載 誌: 判例時報1828・19頁
●審級関係: 高裁逆転勝訴(原審・東京地裁平成13年7月27日判決)、上告受理申立本件は、水産会社たる投資家が、昭和59年から平成6年までの間に、取引総額1777億円、取引回数4392回に及ぶ取引(対象は、信用取引を含む株式取引、債券、投資信託、外国証券、ワラント、株価指数オプション、国債や株式の先物取引、CP、CDなど)により、24億円強の損害を被ったとして、過当取引、断定的判断、適合性原則違反、説明義務違反を理由に、内金として14億3400万円の損害賠償請求を行った事案であり、一審では投資家全面敗訴となっていた。
本判決も、投資家(代表者ら)が証券取引を行うに十分な知識、経験、能力を有していたことを重視して、オプション取引以外の取引については、投資家の主張をすべて排斥した。しかし、オプション取引については、「コールオプションであれプットオプションであれ、それらのオプションを売る取引は、利益がオプション価格の範囲内に限定されているにもかかわらず、原資産価格の変動の方向によっては、無限大あるいはそれに近い大きな損失を被るリスクを負担するというものであるから、そのようなリスクを限定し、あるいは回避するための知識、経験、能力を有しない者がこれを行うことは、極めて危険かつ不合理な取引であるというべきである」とした上で、かような者にオプションの売り取引を勧めてこれを行わせることは、特段の事情のない限り、適合性原則に違反すると判示した。そして本判決は、投資家(代表者ら)は通常の証券取引を行うには十分な知識と能力を有していたが、オプションの売り取引に伴うリスクを限定し、あるいは回避するための知識、経験を有していたとは到底認めることができず、上記の特段の事情も認められないことから、本件におけるオプションの売り取引の勧誘は適合性原則違反であるとし、さらに、本件のオプション取引においては売りの取引が多数行われていることから、その全体が適合性原則違反であると判示した。なお、証券会社側は、オプションの売り取引の中には、投資家が決算対策として注文し、その結果、大きな損となったものもあったと主張したが、本判決は、これもそもそも適合性を有しない投資家に売り取引を勧めてこれを行わせたことに起因するものであり、その際に売り取引の危険性や損失を限定、回避するための方策等について十分な説明が行われたとの事情もうかがえないから、仮に証券会社の主張する事情があっても、証券会社の責任を否定すべきではないとした。(過失相殺5割)
また、証券会社側からは、損失確定の翌日から3年を経過したものにつき時効の主張が行われたが、本判決は、長期間継続して多数回にわたって行われた一連の証券取引のうちの一部の勧誘行為について不法行為が認められる場合に、個々の取引が決済されるごとに損害が確定し、時効が進行すると解するのは相当性を欠くとした上で、取引が最終的に終了したときに初めて確定的に損害の発生を知ったと見ることができるとして、時効もその時から進行するとの判示を行って、証券会社の主張を排斥した。
過当取引等の違法事由が安易に排斥されている点には疑問が残らないわけではないが、通常の証券取引につき十分な知識と経験を持つ者との関係においても、オプションの売り取引の勧誘は特段の事情がない限り適合性原則違反となるとの点は、極めて正当にして先例的意義を有するものと言える。時効に関する判示内容も、当然と言うべきものではあるが、東京高裁の裁判例として、重要な意義を持つものと思われる。