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解    説

■判  決: 大阪地裁平成15年3月13日判決

●商  品: その他(日経平均株価先物)
●業  者: 日興證券
●違法要素: 無断売買(注文執行ミスの事後処理として)
●認容金額: 1563万1591円
●過失相殺: なし
●掲 載 誌: セレクト21・441頁
●審級関係: 

 顧客の注文とは異なる限月の日経平均株価先物が買い付けられたケースにおいて、証券会社が行った事後処理が問題となった事案である。すなわち、証券会社は、顧客が1月31日に行った3月限月の注文につき、誤ってこれを執行せず、その後3月8日に3月限月を買い付けた上で(1月31日の価格より約1200万円下落していた)、これを1月31日の寄付値で顧客が買い付けたと同様に扱って、上記の1200万円の差額を顧客の負担とし、顧客の口座から出金した。また、この3月限月は翌3月9日に決済されて約230万円の損失が生じた。かような経緯の下、上記の3月限月の買付処理が正当なものであったか、顧客の承諾を得ない無断売買となるかが争われた。
 判決は、当初の委託を受けた後に証券会社が注文を執行しなかった以上、顧客の注文に基づく債務の履行を証券会社はなしえなくなったから、顧客からの新たな委託がない以上、前記3月限月の買付は無権限でなされたものとなると判示した。また、証券会社が証券事故についての確認申請手続、自己責任原則、日本証券業協会作成の手引書に記載された処理方法などを根拠に、前記処理の正当性を主張したのに対し、判決は、「銘柄相違」の執行を行ってしまった場合の事後処理全般につき子細な検討を行った上で、上記主張を排斥した。(預託金返還が認められたので、過失相殺は問題となっていない。)
 なお、本件では預託金返還の契約責任が肯定されたものであるが、不法行為に基づく損害賠償的な要素があること等を理由に、証券会社の債務不履行と相当因果関係に立つ損害として弁護士費用の賠償も肯定された。