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解    説

■判  決: 大阪高裁平成14年11月29日判決

●商  品: 株式
●業  者: 和光証券(現・新光証券)
●違法要素: 断定的判断の提供
●認容金額: 1171万7213円
●過失相殺: 5割
●掲 載 誌: セレクト21・102頁
●審級関係: 高裁逆転勝訴(原審・大阪地裁平成13年9月17日判決)、確定

 僅かながら株式取引経験があった投資家(主婦)が、勧誘によって平成12年2月に最高値とも言うべき価格(約2150万円)で光通信株を購入し、ほぼ全損に近い損失を被った事案であり、事実関係のレベルでは、「今晩株式分割が発表され、値が吹いて買えなくなる」との内容での勧誘が行われたか否かの他、信用取引経験があった元夫(本件取引当時は同居)の関与の度合いや、購入当日に初めて勧誘が行われたのか、あるいは以前から勧誘や検討が行われていたのか、といった点が争われた。そして一審判決は、証券会社担当者が株式分割に関して述べた言辞には、噂であって不確実な情報にすぎないことが示されていたし、新聞やアナリストレポート等の根拠のあることであった、投資家は以前から光通信株に興味をもって検討しており、株式分割の「噂」が不確実な情報であることは認識しつつ購入に及んだと推認できる、として、投資家の請求を棄却した。
 これに対して本判決は、勧誘文言の認定自体は一審判決とさして変わらず、「噂によれば光通信が今日株式分割の発表をするボルテージが一番高い」「グッドウイル株が20分割したときは、値が噴いて買えない状況になった。光通信株も次の月曜には値が噴いて購入できないかもしれない。」といった発言による勧誘が行われたと認定した。その上で本判決は、投資家の属性や取引経験(元夫が本件取引につき具体的助言を行ったことは認められないとされた)、さらには東証一部上場株であるものの値動きの激しさが指摘されていた光通信株の特徴を重視し、「噂であることを前提とするものであるにしても、・・・具体的情報を告げて控訴人に早期の決断を迫ったものであり、以上の点からすれば、投機的取引の経験に乏しい控訴人は、被控訴人○○(注・担当者)の本件当日ないし近日中に株式分割があるとの情報を信じて、本件株式を購入したものであって、被控訴人○○が確実な内部情報であるとまでは告げていないにしても、控訴人がこれを信じたのも無理からぬ状況にあったというべきであるから、同被控訴人の上記勧誘行為は具体的情報による断定的判断の提供をし、顧客である控訴人の自由かつ自主的な判断を妨げたものとして違法といわざるを得ない。」とした(過失相殺5割)。なお、勧誘と購入の関係については、以前から投資家が光通信株に関心を抱いていたとしても、本件当日の勧誘によって購入を決断したとみられるとして、因果関係が肯定された。
 適合性原則違反の主張は排斥されているものの、実質的には投資家の属性と対象銘柄の特質等を総合的に勘案して、当該勧誘言辞が違法となるか否かが判断されており、「噂であることが前提で、確実な内部情報であるとまでは告げられていない」場合でも、諸事情を勘案して違法勧誘となる場合があることを明らかにしている点に、本判決の意義があると言えよう。また、多数の被害を産んだネットバブルの象徴と言うべき光通信株の事案である点も、注目されるところである。