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解 説 |
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■判 決: 名古屋高裁平成13年8月9日判決
●商 品: 投資信託
●業 者: 国際証券
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 2887万1319円
●過失相殺: 5割
●掲 載 誌: 金融商事判例1127・18頁
●審級関係: 高裁逆転勝訴・確定(原審・名古屋地裁平成12年7月21日判決)事案は、自動車運送事業会社である投資家が、証券会社担当者の低リスクの商品であるとの説明により購入した外国投資信託につき、運用対象のうちの2銘柄のデフォルトとウォン・ドル為替リスク回避のためのヘッジが行われていなかったことを理由とする損失が生じ、投資家において説明義務違反等を根拠に損害賠償請求を行ったというものである。これに対して一審判決は、投資家が過去に海外で起債を行ったこともあったことなどを重視して、証券会社側にはリスクヘッジに関して明示的な説明を行うべき義務はなく、担当者が投資家に為替リスクの存在の可能性につき積極的に誤認を生じさせる表示を行ったとも認められないとして、投資家の請求を棄却した。
これに対して本判決は、まず、投資家が将来設備投資資金として使用する予定であった資金を安全確実な商品で運用しようとしており、担当者はかかる投資家の低リスクを指向する事情を熟知していたことは明らかであるとし、他方、証券会社の内部文書の記載等から、証券会社の投資信託部自身が運用期間全体にわたって為替リスクヘッジが行われる低リスク商品であったと認識していたと認められ、担当者もかような認識に基づいて勧誘を行ったものと認められるとした(実際には本件ファンドは、運用会社側の裁量判断でヘッジを行うというに過ぎないものであった)。そして本判決は、「低リスクを指向する投資家に対して本件ファンドを勧誘する場合には、投資家を保護するために、その投資態度には必ずしも適合しないウォン・ドル為替リスクがあることを投資家が判断し得る程度の、ファンドの仕組みに関する具体的な情報を説明すべき信義則上の義務がある」と判示して、説明義務違反による不法行為を肯定した(過失相殺5割)。
なお、証券会社側は、投資家には海外起債や他社での取引などを通じ、為替リスクについての十分な判断能力があったとの反論を行ったが、本判決は、投資家側の判断能力を考慮しても、本件の投資資金の正確と契約に至る経緯等を考慮すれば、説明が十分であったとは認められないとした。また、証券会社側は、本件ファンドは運用会社において継続してリスクヘッジがなされているものと考えており、運用会社側がヘッジを行わなかったことは予想外のことであったとも反論したが、本判決は、専門業者である以上、リスクを正確に把握して顧客に適切に説明すべきは当然であるとして、証券会社の過失の認定を妨げる特段の事情にはならないとした。
極めて複雑な内容を有する多種多様な外国証券が販売されている昨今、果たして証券会社自身がその商品内容を正しく理解し、顧客に対して適切な説明を行うことができているのかが危惧されているところ、本判決は、外国投信につき、証券会社自身の不正確な認識に基づいて誤った説明が行われていたことを認め、説明義務違反を肯定した点において注目すべき判決となっている。また、相当の判断能力を有する法人との関係において、この点を偏重して説明義務自体を否定した一審判決とは異なって、資金の性質や投資意向を重視し、適合性に問題があることを前提に高度の説明義務を認めている点は、従前の諸判例の判断手法を踏襲したものとはいえ、大いに参考になるものと言える(但し、控訴審で追加された適合性原則違反の主張に対しては、直接の判示はなされておらず、この点には若干の疑問が残る)。