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解 説 |
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■判 決: 神戸地裁姫路支部平成13年6月14日判決
●商 品: 株式(信用取引)
●業 者: 新光証券
●違法要素: その他(注文不履行)
●認容金額: 5100万円
●過失相殺: なし
●掲 載 誌: セレクト18・1頁
●審級関係: 大阪高裁平成13年11月14日判決(セレクト20・1頁)で認容額減額。原告はインターネット取引も行う経験豊富な個人投資家であった。原告は、平成12年6月、そごう株60万株を注文したにもかかわらず、被告担当者から「ボイスセンターに発注できない」と告げられたため購入を断念したところ、かような被告担当者の言葉は誤情報に基づくもので、被告の注文拒否という債務不履行によって損害を被ったとして、本件訴訟を提起した。なお、原告が主張した損害は、そごう株の売買によって得られていたであろう「得べかりし利益」であった。
判決は、一旦は被告担当者は原告から60万株の注文を受けたにもかかわらず、被告会社のボイスセンターからの誤情報によって受託した注文を実行しなかったと認定し、かような行為は債務不履行に当たるとした。その上で判決は、@そごう株の買建を妨げた被告自らが、買建事実の不存在を理由として、損害が現実に発生してないとして賠償義務を否定することは信義則にも反し、本件においては、原告がそごう株の売買差益を取得した蓋然性が吟味されるべきである、A信用取引においては、顧客の選択肢として、弁済期限の間に反対売買を行うことが予定されており、証券会社も顧客も取引が発注されなければ反対売買による差益獲得の抽象的機会を失うことを当然に理解しているので、予見可能性を云々する余地はなく、かえって、反対売買による差益取得につき具体的な予見可能性が認められなければ賠償義務が認められないとすれば、証券会社は明らかな債務不履行があった場合にも容易に賠償義務を免れることになり、証券取引の安全を損ないかねない、Bこれらからすれば、売買差益の獲得を妨げられたことによる損失は通常損害であり、特別事情に関する証券会社の予見可能性を問わない、と判示した。そして判決は、原告が上記の注文拒否後のある時点で、そごう株の売建注文を委託していたことに着目し、原告が買建を行っていたならば、同時点で反対売買をしていた蓋然性が認められるとして、同時点の株価に基づいて原告の損害(獲得できなかった売買差益)を認定した。また、本件は被告が誤解により注文実行を拒否した事案であって、原告に裁量や判断を差し挟む余地はなかったことから、過失相殺も否定され、原告の請求全額が認容された。
「得べかりし利益」につき真正面から検討を行い、適切な判断によって賠償義務を認めた画期的な判決であり、今後の金融商品被害訴訟における損害論の展開において重要な意義を持つ判決であると言える。(なお、控訴審判決たる大阪高裁平成13年11月14日判決では、事実認定レベルで20万株の注文しか認められず、「売却した蓋然性の高い時点」についても修正が加えられたため、認容額が大きく減少した。しかし、その余の点については控訴審判決においても原判決の判示内容が維持され、「得べかりし利益」が損害として認められたことは、先例的価値が大きいものと言える。)