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解    説

■判  決: 大阪高裁平成13年6月14日判決

●商  品: ワラント
●業  者: 野村證券
●違法要素: 適合性原則違反、説明義務違反、購入時の助言義務違反
●認容金額: 344万4941円
●過失相殺: 7割
●掲 載 誌: セレクト19・161頁
●審級関係: 神戸地裁平成11年9月29日判決(セレクト14・240頁)の控訴審判決

 事案は、自営業者である投資家が平成7年から8年にかけて、多数のワラント取引(大半が単価10ポイント以下、残存権利行使期間2年未満)により損害を被ったというものであり、一審判決は、投資家が主張した違法要素のうち、説明義務違反のみを肯定して、投資家の請求の一部を認容した(過失相殺8割)。
 その控訴審判決である本判決は、「顧客がワラント取引の投機性に惹かれ、そのためワラント取引の前記のような危険性を知りながらもこれをあまり考慮しない投資意向を示している場合であっても、その顧客が1審原告のようなもっぱら株式だけの取引をしてきた個人投資家でワラント取引の経験がなく、投資資金に限度があることを表明している場合には株式取引をすべてワラント取引に移行させ投資資金全額をワラント取引につぎ込むようなことになるワラント取引の勧誘は控えるべきである。顧客がこれを望む場合にも、これが適切な投資とはいえないことを十分に説明し、それにもかかわらずあえてこれを希望する場合にだけ、上記のようなワラント中心の勧誘をするべき注意義務があるというべきである」と判示した。
 その上で本判決は、本件においては一般的な説明にはあまり足りないところはなかったとしつつ、上記のような価格及び残存権利行使期間のワラントは流通性が低いため一般投資家の投資対象としては適切でなかったとし、また、担当社員が本件各ワラント固有の問題を、「1審原告のためを思って真摯に説明していれば、1審原告の投資意向もそれなりに変化した蓋然性がある」とした。そして本判決は、投資資金の限度が明示されていたことや途中からはその全額がワラントに充てられるようになったことも指摘し、たとえ1審原告がワラントに魅力を感じワラント取引に積極的であったとしても、担当社員はこのような勧誘を差し控え、仮に勧誘するとしても危険性が大きいことを十分に説明し、それでも1審原告が希望する場合にだけ取引に応じる注意義務があったところ、担当社員がこの注意義務を尽くしたと認めるに足りる証拠はないとした。なお、過失相殺は7割となって、認容額が増額された。
 過失相殺は大きいものの、投資家がワラントに魅力を感じワラント取引に積極的であり、しかも一般的な説明にあまり足りないところはなかったとの前提の下で、対象商品の固有の問題点や異常と言うべき取引態様から高度の注意義務が認められた点で、有意義な判決と言える。