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解 説 |
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■判 決: 大阪地裁平成13年4月11日判決
●商 品: 株式
●業 者: 高木証券
●違法要素: その他(誤情報の提供)
●認容金額: 1464万3731円
●過失相殺: なし
●掲 載 誌: セレクト17・320頁、判タ1091・274頁
●審級関係: 控訴事案は、かねてからヤフー株に注目し、連日、担当社員から情報を詳しく聞いていた原告が、ヤフー株が決算発表直後に大幅に値上がりする傾向があることから決算発表が近いのであればその直前に同株を購入しようと決意し、これらの事情を告げて平成12年4月3日に担当社員にヤフーの決算発表の日を尋ねたところ、担当社員が誤って4月5日が決算発表日であると告げたため、原告はヤフー株を購入し、4月7日に売却して損失を被ったというものであった。
本件においては前提事実としての誤情報の提供には争いがなかった。まず判決は、原告の信頼や、原告が決算発表日を尋ねる理由を述べていたこと(従って原告が提供を受ける情報に依拠して株式購入に至ることが予想できたこと)などから、証券会社側には正確な情報を伝達する義務があったこと、担当社員がこれに違反したことを認めた。次に、最大の争点となった誤情報の提供と損害との因果関係については、判決は、誤情報の提供がなければ原告は購入に及ばなかったことを認め、また、ヤフー株は決算発表までは下落を続けたが、原告の予測通りに決算発表日(4月18日)の直後から暫くは上昇したこと、原告がかかる実際の決算発表後までヤフー株を保有していれば損失は生じなかったが、値動きが激しい状況であった上に、誤情報の提供問題についての被告会社との交渉も決裂した中で、保有を続けることを原告に期待することはできず、4月7日の売却はやむを得なかったと言えることから、誤情報の提供と損害との間の相当因果関係を否定できないとした。
また、被告会社は、3月期決算の発表が4月5日に行われるはずがないことは原告にも容易に分かることであったとして過失相殺を主張していたが、判決は、そのことに気付かなかった過失は担当社員にもあり、原告が証券取引に相当程度精通しているとしても、その過失の程度が証券会社の外務員よりも重いとは解されないとして、過失相殺を否定した。
因果関係、過失相殺のいずれについても実に明快で適切な判示がなされており、同種事案において大いに参考となる判決である。