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解 説 |
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■判 決: 東京地裁平成13年3月22日判決
●商 品: 株式(信用)
●業 者: 東京証券(判決時の商号・東海東京証券)
●違法要素: 断定的判断の提供
●認容金額: 1526万3998円
●過失相殺: なし、5割
●掲 載 誌: セレクト17・258頁
●審級関係:事案は、株式会社の部長職にあり、平成11年7月から信用取引を開始していた原告が、証券会社担当社員からSANKYO株及びトーセ株(いずれも被告会社が幹事会社であった)につき好内容の決算発表と株式分割が行われて値上がりする旨の勧誘を受けて、同年9〜10月にこれらの銘柄を信用取引にて購入したが、株式分割が遅れ、あるいは行われず、損害を被ったというものであった。
判決は、原告は上記のような勧誘を受けて、自分自身も値上がりを予想し、最終的には自己の判断で購入に及んだとする一方、株価予測に絶対はないことを十分認識していた原告が信用買いを繰り返したのは、担当社員の好内容の決算発表と株式分割があるとの説明によるものであったと判示した。その上で判決は、市場に株式分割の噂や期待があり、担当社員は悪意を持って虚偽情報を告げたわけではないことを前提にしつつ、「株式分割は、株式の発行会社の意思決定があればほぼ間違いなく実施されるものであり、確実な情報をつかんでいれば、かなりの確度で予想することができるものであり、この点で株価動向の予測とは情報の性質が異なっている(だからこそ原告は幹事会社の社員である○○の説明に依拠したものと考えられる。)。これらのことを考えると、○○の原告に対する株式分割の発表予定に関する具体的かつ断定的な説明は、相当な範囲を超えた違法なものであったと認めるのが相当である。」と判示した。なお、市場関係者や被告社内において株式分割の可能性があるとの情報があったことは、その情報が噂の域を出ていなかった以上は具体的かつ断定的な説明を正当化するものとはならず、原告が幹事会社の担当社員に対し内部情報の提供を求めたことも、担当社員の説明の違法性を否定する理由とはならないとされている。
また、判決は、取引の一部については、購入後に担当社員が売却を勧めたにもかかわらず原告は自己の判断で断ったところ、この時点で売却していれば損失は生じなかったと認定し、同取引の損失は決済のタイミングに関する原告自身の判断によるものであるとしたが、これも原告がそれまでの担当社員の株式分割についての説明に望みを託したためであるとして、過失相殺5割にて証券会社の損害賠償責任を認めた。その他の取引については、過失相殺は行われていない(但し、問題とされた取引期間中の他の信用取引の利益が損害から控除された)。
担当社員とのやりとりがすべてテープに録音されていたようで、判決理由中でもその一言一句が子細に認定されており、近時における以前と変わらない違法勧誘の実情が窺い知れる判決となっている。また、証券会社社員の断定的言動が投資家に与える影響が正しく認定、評価されている点、請求対象の大部分につき過失相殺が行われていない点も、評価に値する。