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解    説

■判  決: 大阪地裁平成13年2月23日判決

●商  品: オプション(日経225株価指数オプション)
●業  者: 東和証券(判決時の商号・つばさ証券)
●違法要素: 過当取引
●認容金額: 5366万1466円(但し証券会社からの立替金請求も2873万9754円認容)
●過失相殺: 5割
●掲 載 誌: セレクト17・770頁
●審級関係: 

 本訴訟は、著名な料亭経営者の妻であって、平成5年以降は信用取引経験も有していた投資家が、平成7年から平成8年にかけてのオプション取引(日経225株価指数オプション)に関し、無断売買、取引無効、詐欺取消、さらには適合性原則違反・断定的判断の提供・損失補償約束・説明義務違反・過当売買による債務不履行(主位)ないし不法行為(予備)を主張して1億円を超える損害賠償請求の本訴を提起したところ、証券会社がオプション取引についての未払立替金約5748万円の支払いを求める反訴を提起したというものである。
 判決は、投資家の無断売買や取引の無効・取消に関する主張を排斥した上、投資家の資力や経験に加えて、勧誘によるとはいえ投資家は以前から売買差益を狙った極めて短期間の売買に終始していたとして、適合性原則違反も否定し、断定的判断の提供等の違法要素も否定した。
 しかし判決は、過当取引につき、@取引の大量性、頻回性、適合性、Aコントロール性、B悪意の3要件に分けた検討を行い、@については、ほとんどが取引の当日ないし数日後に反対売買により決済されていること、ほぼ全取引日において複数回の取引がなされていることを指摘した上で、投資家の夫の知人から借り受けた株や現金が委託証拠金や取引資金に充てられるようになった以降、特にその株式を売却し始めた以降は、もはや投資家の資力を超えた過大な取引であるとした(売買回転率の主張はなかったようである)。次に、Aについても、上記借り受けが担当社員の積極的な勧めにより行われたこと(なお、かかる借り受けを投資家と担当社員のいずれが主導したかは激しく争われていた)、担当社員は本件取引により全国でトップクラスの営業成績を上げていたことを重視して、担当社員の「取引はすべて投資家が主体的・積極的に行っており、自分は途中からは単なる使い走りだった」旨の供述を排斥して、本件取引はほぼ全体的に担当社員の積極的・主導的な勧誘によりなされたとし、Bについても、担当社員の内心においては投資家の利益よりも自らの利益を追求した面が強いことは否定できないとした。以上により判決は、担当社員の行為は「一般的にいわれる「過当取引」に当たるものか否かはともかく、全体的にみて、証券取引における証券会社の従業員の負う義務に反したものといわざるを得ない」として、証券会社の債務不履行責任を認めた。
 なお、5割の過失相殺が行われ、本訴・反訴ともに、認定された損害ないし立替金から5割を控除した金額が認容されている。