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解 説 |
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■判 決: 大阪高裁平成12年8月24日判決
●商 品: ワラント
●業 者: 野村證券
●違法要素: 説明義務違反
●認容金額: 2209万6906円、811万5547円、172万3731円
●過失相殺: 5割、2割、5割
●掲 載 誌: セレクト17・418頁
●審級関係: 一部逆転勝訴、大阪地裁平成10年10月28日判決の控訴審、確定3名の投資家のワラント被害事案であり、一部逆転勝訴判決である(一審では1名が一部勝訴、2名は全面敗訴)。
まず、Aは資産家の主婦であり、会社社長である夫はAと同じ担当者により多数の信用取引、ワラント取引を行っていた。Aは、昭和62年から平成2年9月にかけて勧誘により15回のワラント取引(うち9回は利益が生じた)を行っていたところ、一審判決は、最後のワラントについては十分な説明があったとしつたが、他のワラントについては一応の説明はあったが不十分であったとして、説明義務違反による損害賠償を認めた(過失相殺6割)。本控訴審判決は、初回のワラント取引時に、ハイリスク・ハイリターンであることや期限が来れば無価値になることの説明がなされたこと、5回目のワラント取引の頃に説明書交付も行われたこと、平成2年2月以降はAは時価報告を受けて価格下落を認識していたこと、最後のワラント購入時には訪問による長時間の説明を受けてワラントの特質を相当程度理解したことを前提としつつ、Aの属性や適合性の程度に照らし、理解が得られるような方法で懇切丁寧な説明をしたとは言えないとして、全ワラント取引につき一体的な説明義務違反を肯定した。とくに最後のワラントについては、新規発行でマイナスパリティであったことから、同銘柄の特性が具体的に説明されなかったため、Aは取引の危険性につき正確な理解を得るに至らなかったとして説明義務違反が認められた。また、過失相殺は5割に減じられた。
Bは、相当の株式取引経験を有する会社社長であり、同銘柄のワラントを2回購入して損失を被ったものであったが、一審では全面敗訴となっていた。本控訴審判決は、争いのあった勧誘状況につき詳細な事実認定を行い、担当社員は、電話により、一旦はわからないからとして断っていたBに、ワラントの概括的な説明はしたもののその特質を具体的に説明することなく再度の勧誘を行い(この際、Bは会議中であった)、Bは有利性を強調した勧誘に負ける形でワラントを購入するに至ったとして、説明義務違反を認めた(過失相殺2割・なお、判決は、最初のワラントを電話勧誘すること自体が不適切であり、しかもBは拒絶していたのであるから、説明書を持参して具体的な説明をおこなうべきであったと判示している)。但し、ナンピンの趣旨にて購入された2回目のワラントについては、直接の説明書に基づく説明を受けた後であったから、Bの投資経験や属性に鑑みれば理解可能な説明がなされたと言えるとされ、請求棄却となった。
Cは、大手都銀支店長を経て出向先で総務部長を務め、その後は自営業であった。また、昭和62年から平成3年7月にかけて勧誘により22回のワラント取引(うち15回は利益が生じた)を行っており、一審では全面敗訴となっていた。本控訴審判決は、上記属性に加え、Cは本件ワラント取引に先立ち出向先で有価証券代理人としてワラント取引も経験しており、説明書の交付も受けていたとして、取引全体としての説明義務違反を否定した。しかし、極端なマイナスパリティとなっていた1銘柄については、勧誘自体に問題があり、勧誘するのであればその具体的な根拠を説明する義務があるところ、かかる根拠も、当該銘柄がそのような商品であることも説明されておらず、当該銘柄の特性についての説明義務違反があるとされた(過失相殺5割)。
ワラントの特質の理解の可否につき、投資家の一般的属性や投資経験を偏重して、安易に理解が可能であったとした点には疑問が残る判決である。しかし、理解を前提とした高度の説明義務を基礎に、当該商品一般についての説明義務違反とは別個独立に、個別銘柄の特性についての説明の欠如だけでも不法行為が成立するとした点、会社社長で投資経験豊富なBにつき過失相殺を2割にとどめ、B、Cについてもその属性や取引回数の多さにかかわらず5割を超える過失相殺までは行わなかった点などは、一定程度評価できよう。